一覧へ戻る
コロナ危機と闘う

6月20日解除なら、五輪期間中に再宣言の可能性

有観客は人流強める誤ったメッセージに
7月下旬まで緊急事態宣言の延長を

梶田 脩斗
  副主任研究員
小林 辰男
  政策研究室長兼主任研究員

2021/06/11

 政府は緊急事態宣言を6月20日まで再延長したが、20日に完全解除すれば、人流が強まり、東京五輪(オリンピック・パラリンピック)の開催期間中に医療提供体制がひっ迫、再び緊急事態宣言に追い込まれる恐れがある。回避するには五輪開催直前まで緩やかな行動制限措置を継続する必要がある。「あと1カ月間のがまん」により、今夏の感染者数と重症患者数のピークは抑制され、再宣言に陥るリスクは小さくなり、無観客などの制約付きで五輪を乗り切れる可能性が高まる。ただ感染力の強い新たな変異株の拡大が急速に進むと、医療提供体制のひっ迫を避けるために行動制限を9月初めまで継続することが必要で、五輪開催は困難となる。また五輪を有観客で実施すると「夏休みは自由に旅行を楽しめる」という誤ったメッセージを送ることになり「人流増→感染急拡大」を招き、医療崩壊につながる恐れもあるだろう。

図表 7月下旬までの行動規制で五輪中の緊急事態宣言を回避(新規感染者数)

(注) 実績の直近は21年6月5日。
 基本シナリオは6月20日に緊急事態宣言を完全解除、抑制シナリオは緊急事態宣言を無条件に解除せず、時短などの規制を7月下旬まで継続。完全解除後の人流は20年9-12月と同様の流れになると仮定。
(資料)Google “COVID-19 Community Mobility Report”、厚生労働省

バックナンバー

2022/02/01

第6波収束には2月上旬にも緊急事態宣言を

宣言期間中にワクチン3回接種を加速
放置は濃厚接触者1日100万人超、21年度GDPを0.5%押し下げ

高野 哲彰小林 辰男

2022/01/05

ワクチン・アクセスの南北格差の解消に経済合理性

−援助から戦略的投資へのパラダイム・シフトを−

泉谷諒(研究生 大成建設より派遣)/ 出口恭子

2021/10/14

新しい資本主義下でも、“成長なくして分配なし”

DX加速で生産性高め、成長力引き上げを
脱炭素社会実現の堅持は国際公約

宮﨑 孝史高野 哲彰梶田 脩斗岩田 一政

2021/09/13

コロナ以前の経済活動レベル、3回接種でも戻せず

行動制限なしでは1月に緊急事態宣言、消費にもマイナス

宮﨑 孝史小林 辰男

2021/06/11

6月20日解除なら、五輪期間中に再宣言の可能性

有観客は人流強める誤ったメッセージに
7月下旬まで緊急事態宣言の延長を

梶田 脩斗小林 辰男

2021/03/18

現状放置なら5月下旬に緊急事態宣言の恐れ

まん延防止措置の機動的活用を
第4波防止、ワクチン普及の速度がカギ

小林 辰男高野 哲彰梶田 脩斗

2021/02/01

緊急事態宣言、ステージⅡまで継続を

21年春から消費は回復軌道に
医療・経済面で将来の恩恵大きく