第47回中期経済予測で想定した2050年のDX社会の産業構造を2015年の経済規模に当てはめ、これを現実の2015年産業連関表と比較することでDXと為替変動の関係を分析した 。産業全体では、両者の為替変動の影響はほとんど同じと言えるが、DXを加速させると、加工組立産業は円安の恩恵を得やすくなり、化石燃料の輸入が大幅減になるエネルギー産業も円安によるマイナス効果は小さくなる。一方、IT(情報技術)サービスは円高メリットを受けやすくなる。製造業中心で輸出に依存する経済では、円高懸念が強調されがちだが、DX社会にシフトすればするほど、円安のデメリットよりも円高のメリットが大きくなるだろう。円高による交易条件の改善は、理論的には海外への所得流出を押さえ、豊かな生活をもたらすことにつながるとされるが、日本の経済社会はデジタル化するほど、この理論どおりになる可能性が高い。
図 製造業は円安メリットが拡大するが、非製造業は円高メリットが大きくなる
(注)2015年産業連関表と日本経済研究センターが第47回中期経済予測で作成した2050年DX社会の産業連関表を2015年時点に修正し、10%の円安・ドル高が日本の産業に与える影響を試算した。
(資料)総務省『産業連関表』、日本銀行『輸出入物価指数の契約通貨別構成比』を基に、日経センター推計
※本レポートは日本経済新聞8月4日付け朝刊1面「通貨漂流 ニクソン・ショック50年 ③」の記事で一部引用されました。
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