政府は首都圏や京阪神、中京圏など19都道府県について緊急事態宣言を9月末まで延長した。合わせて11月にも行動制限を緩和する方針も示した。この決定を踏まえ、当センターでは感染拡大の予測、経済(消費)への影響を試算した 。政府の計画通り、11月初めまでに希望者へワクチンを2回接種できれば、年明けにも国内の感染は収束に向かう。ただ収束状態を維持するには、マスク着用や渡航制限のほか、大声を伴う大規模イベントの開催を規制するなど3密回避の行動制限が必要になる。2回接種の完了を機に飲食やイベントなどで新型コロナウイルス感染拡大前の活動を許容する“正常化”に一気に移行すると、3回目接種を実施しても12月下旬から感染拡大が起こり、22年1月中下旬に再び緊急事態宣言の発出に追い込まれる恐れがある。消費への悪影響も大きくなる。経済を可能な範囲でコロナ前に戻すには、飲食やイベント開催への参加には、ワクチン接種証明や検査による陰性証明の義務づけが避けられないだろう。
図表 ワクチン3回接種でも経済活動の“正常化”は難しい(新規感染者数)
(注) 実績の直近は21年9月4日。
基本シナリオは9月末日に緊急事態宣言を解除、行動制限継続、リスクシナリオは11月初めから各種活動を新型コロナウイルス感染拡大前にする。3回接種シナリオは、11月から接種を開始する。
(資料)Google “COVID-19 Community Mobility Report”、厚生労働省
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