医療制度と医療サービスの提供体制の改革は、古くて新しい国家的課題である。 日本経済新聞社と日本経済研究センターは医療改革研究会を創設し、深刻な感染症のパンデミック(世界的大流行)のような有事は当然として、平時から患者が真に満足できる医療サービスを受けられるようにするための緊急提言を2022年2月にまとめた。政府・地方自治体が保険医療機関にガバナンスを働かせる仕組みと、デジタル技術を活用して医療体制を再構築する「ヘルスケア・トランスフォーメーション」(HCX)がその核であった。
緊急提言をふまえつつ、本研究会は今後の人口構造の激変を見すえた最終報告をまとめた。デジタル化とグローバル化をテコに、医療をより患者本位のサービス産業に転換させ、日本経済の成長の原動力にする規制改革を主眼とする。キーワードは引き続きHCXである。新型コロナウイルスが日本の医療の脆弱性を浮き彫りにした今をおいて改革実行のときはない。岸田文雄首相、関係閣僚と府省庁、与野党の政策責任者、地方自治体の首長、大学医学部などを含むあらゆる医療関係者に、一丸となって改革に邁進するよう強く求める。
《骨子》
I. 医療提供体制の再構築 ①デジタルで医療格差解消 ②看護師にも医療行為を ③家庭医養成、患者も節度を ④成長の原動力、医療ツーリズム II. 医療イノベーションを国家戦略に ①国家安全保障の視点を ②エコシステムを構築せよ ②「価値に見合った薬価」を基本に III.負担と給付の改革を急げ ①年齢よりも能力に応じた負担に ②給付の発想転換が必要 ③財源確保は消費税で
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