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Discussion Paper 108 2006.12

アジア景気との連動性はなぜ高まっているのか
――動学一般均衡モデルによる分析




執筆者:竹内文英・日本経済研究センター研究開発部次長兼主任研究員

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概要

 90年代末から日本、米国とアジア各国、及びアジア各国間の景気の連動性が高まっている。国際的な景気の相互依存関係を規定する要因としては貿易や投資に注目が集まるが、特にアジアではこの時期に、生産の分業体制が急速に立ち上がり、これが景気の連動をもたらしている可能性がある。先進諸国から直接投資を受け入れたアジア各国が、投資国から資本財や中間財などを輸入して最終工程を担当する工程間分業(fragmentation)は、各国が比較優位を持つ異なる最終製品をやり取りする伝統的な貿易のあり方に比べると、需要や技術の波及効果を強めている可能性がある。
 従来、この問題にアプローチする場合、工程間分業の代理変数としての産業内貿易の進展度合いを景気の相関度に直接回帰させるという方法がとられてきた。しかし、産業内貿易と景気の相関の関係について理論的に十分吟味されたわけではなく、両者がともに内生変数という同時性の問題もついて回る。この問題は理論に基づいた、より一般均衡的な枠組みの中でとらえ直す必要がある。
 本稿では、先進諸国経済を主な分析対象にしてきた動学一般均衡(Dynamic General Equilibrium)モデルをアジア地域に適用し、特に日米とアジアの間の景気の連動性の要因について検討した。Backus et al.(1992、1994)、Stockman et al.(1995)、Boileau(2002)などに依拠しながら、資本財の交易を明示的に組み込んだ2国モデルを作成したうえで、パラメータを特定化するカリブレーションを可能な限り実際の日米、アジアのデータに即して行った結果、90年代と90年代末以降とで異なる現実の景気の相関度に対して、上記のような工程間分業のメカニズムが大きな影響を及ぼしていることが判明した。資本財や中間財の相互の交易が活発化するなかで、アジアで現地生産された資本財の対日米輸出が加速し、両国の設備投資に利用される結果、投資主導の景気の相関が実現している。このようなアジアに特徴的な国際分業システムが今後も進展していけば、域内景気の連関性がさらに高まっていくことが予想され、このことは現在政策課題として挙がっている域内の経済・通貨統合の行方にも大きな影響をもたらすだろう。

キーワード:国際的な景気の連動性、工程間分業、動学一般均衡モデル
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