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Discussion Paper 122 2009.8

都道府県別医師不足の長期見通し
――「医師増員」のネクストステージ




松岡秀明・日本経済研究センター研究本部研究員

全文/Discussion Paper No.122全文/Discussion Paper No.122

ポイント

1.本稿では日本の医療にとって大きな課題である医師不足問題に関し、「患者当たり医師数」の指標を用い、2035年度までの都道府県別の医師不足(医師の充足度)の長期見通しを行った。将来の患者数と医師数を予測し、不足数(充足度)に関しても厚生労働省などによる既存の定義と異なる基準を設けた上で、2006年、16年、25年、35年時点の都道府県別の患者数、医師数を試算した。

2.医師不足問題に関しては政府が昨年、1980年代から続けてきた医師数の抑制政策を転換、医学部定員の大幅増員の方針を打ち出した。また第45回衆院選におけるマニフェスト(政権公約)でも、ほとんどの政党が「医師不足」解消と医師数増加を公約に掲げるなど、主に「医学部定員増」による対策が打ち出されているが、それだけでは足りないというのが本稿の問題意識である。

3.2009年度からの医学部定員増により医学部を卒業して新しく医者になる世代(定員増加世代)は17年度〜26年度の間に5割増える。しかし、卒業に6年、臨床研修に2年を要する間、すなわち16年度までは定員増の効果はない。定員増効果が出る前年の16年度の医師不足数は約7.7万人に上り、特に元々医師数が少ない広島、青森、三重の各県で不足が深刻化する可能性がある。さらに、25、30年時点でも、三重、広島、香川、熊本の各県では医師数の伸びより患者数の伸びが大きいため、改善しない恐れがある。

4.以上の見通しから、医学部の定員増の効果がみられるまでの間は、看護師、助産師など「コメディカル」が医師の業務を代行できる制度の整備、女性医師の現場復帰支援、開業医の緊急医療への参加など、即効性があるあらゆる対策の実行に注力する必要がある。また、医学部定員増の効果が出始めても、医師の地域偏在に手立てを講じない限り長期的に医師不足が続く都道府県が残る。導入が開始された「地元出身者枠」の拡大も含め、地域偏在を是正する政策の工夫がさらに重要になる。

5.医師不足問題には診療科によっての過不足、勤務医の待遇問題など本稿の検討対象外の課題も数多い。マクロ的な医師数のみで解決できない点は認識した上での問題提起である。


キーワード:医師不足、患者数見通し、医師数見通し、都道府県別見通し、医学部定員増
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