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2013.11 金融研究

量的・質的金融緩和政策の効果とリスク ―2013年度金融研究班報告―

日本銀行が4月に導入した量的・質的金融緩和策(QQE)が国内外の金融市場や資金フローに与えた影響について、過去に導入した3種類の非伝統的金融政策と比較検討する。政府債務の増大が深刻な日本においては、金融政策の有効性を国債管理政策との関連でとらえる必要がある。また、QQEの導入に伴い、日銀のバランスシートが急速に拡大する中で、黒田総裁が示した2年という時間軸の先にどのようなリスクが潜んでいるか、日米緩和縮小の影響についても検討する。


 更新履歴 
・「東アジア経済の展望と課題―国際・金融エコノミスト座談会(2013年11月19日東京セミナー)」にて研究成果を報告し、セミナー資料を掲載しました (2013/11/19)

・以下のリポートを公表しました(2013/11/19)
   トピック1:量的・質的金融緩和政策の効果とリスク
   トピック2:異次元緩和が長期金利と資産価格に及ぼした影響
   トピック3:長めの国債発行が緩和効果弱めた可能性も
   トピック4:異次元緩和の出口で発生するコスト  
   トピック5:量的金融緩和に翻弄されるアジア
   トピック6:銀行は利ざやの確保を急げ


トピック1:量的・質的金融緩和政策の効果とリスク ―2013年度金融研究班報告 総論―


金融研究班 主査:岩田一政、総括:左三川(笛田)郁子

日本銀行が4月に導入した量的・質的金融緩和策(QQE)が国内外の金融市場や資金フローに与えた影響について、過去に導入した3種類の非伝統的金融政策と比較検討する。政府債務の増大が深刻な日本においては、金融政策の有効性を国債管理政策との関連でとらえる必要がある。また、QQEの導入に伴い、日銀のバランスシートが急速に拡大する中で、黒田総裁が示した2年という時間軸の先にどのようなリスクが潜んでいるか、日米緩和縮小の影響についても検討する。






トピック2:異次元緩和が長期金利と資産価格に及ぼした影響―金利のフォワード・ガイダンス導入が課題に―


金融研究班 宇都宮 秀夫

日本銀行が量的・質的金融緩和政策を導入して半年が経過した。「異次元緩和」と称される新たな金融政策は、日銀が「物価安定の目標を責任を持って実現する」と明確にコミットしたこともあり、市場に驚きを持って受け止められた。量的・質的金融緩和策が長期金利と資産価格にどのような影響を及ぼしていたのか、過去に実施された非伝統的金融政策と比較しながらニュース分析によって検証する。






トピック3:長めの国債発行が緩和効果弱めた可能性も―国債管理政策と金融政策の連携必要に―


金融研究班 藤川 衛

日本銀行が量的・質的緩和策を導入し、国債の保有構造は大きく変化した。日銀は新たな金融政策で、民間部門が保有する長期国債のシェアを低くし、長期金利の上昇を抑える効果を期待している。一方、財政当局は2000年代に入り、満期が長めの国債を発行し、利払い費を抑えようとしている。一連の金融政策と国債管理政策が長期金利に及ぼす影響を検証した結果、国債管理政策が金融緩和効果を弱めていた可能性があることが確かめられた。






トピック4:異次元緩和の出口で発生するコスト―政府・日銀は利得と損失の配分についてあらかじめ協議すべき―


金融研究班  稲垣賢秀・左三川(笛田)郁子

量的・質的金融緩和策により、日本銀行のバランスシートは急激に拡大し、保有長期国債の残存期間は長期化している。シミュレーションの結果、出口の局面で少なくとも3年間は国庫納付金が納められなくなる可能性があることが分かった。本稿執筆時点で日本銀行は出口論については言及していない。しかし、市場の不安を払拭するためにも、出口の不確実性や生じ得る問題について明確にし、方向性を示すことが必要ではないか。






トピック5:量的金融緩和に翻弄されるアジア―量的緩和縮小でマネーはアジアから米国に逆流するか?―


金融研究班  登地 孝行

日米の量的金融緩和策は国内の金融市場やマクロ経済に影響を与えただけでなく、アジアの金融市場やマクロ経済にまで影響を及ぼした。米連邦準備理事会(FRB)や日銀が量的緩和を縮小する局面では、日米へのマネーの逆流や、アジア諸国の資金流出防衛策としての利上げに伴う資金調達環境の悪化や債務負担の増加などに配慮する必要がある。






トピック6:銀行は利ざやの確保を急げ―2013年3月期銀行決算分析―


金融研究班  稲垣 賢秀・宇都宮 秀夫・登地 孝行・藤川 衛

長引く資金需要の低迷で、国内金融機関は利ざやの縮小に直面している。利ざやが縮小傾向にある中では、量を増やさないと貸し出しの収益は伸びない。ところが、大企業向けや住宅ローンなど一部の優良市場で競争が激化する一方で、中小企業金融円滑化法が期限切れを迎えて潜在的な不良債権は増加している。銀行は日銀に国債を売却した後も、資金を日銀当座預金(いわゆる超過準備)に置いたままで、国内で貸し出しを積極化させる動きは今のところ見られない。「預貸比率」は初めて7割を切った。
利ざやの縮小を補っているのがアジア向け融資などの海外業務である。大手行を中心に地場銀行との業務提携も進んでいる。ただ、地方銀行の海外支店開設には制約もあり、国内の余剰資金を海外に振り向けるようなスキームの構築が求められる。





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