2014.11 金融研究
量的・質的金融緩和政策、導入からまもなく2年
2014年度金融研究班報告B
金融研究班主査:岩田 一政、総括:左三川(笛田)郁子 日銀は2014年10月31日、量的・質的金融緩和(QQE)の拡大に踏み切った。13年4月のQQE導入以降、金融・マクロ変数にどのような効果が見られたか。13年度の金融研究リポートの続編として、QQEの効果と今後想定されるリスクについて検証する。
〈要旨〉
○日本銀行の量的・質的金融緩和政策(QQE)の効果について、3つの波及経路に着目しながら検証する。13年4月のQQE導入から今年10月の追加緩和までの期間について見ると、イールドカーブ効果はタームプレミアムの圧縮という形で観察された。しかし、ポートフォリオ・リバランス効果については、銀行の貸し出しが未だ「持ち直し」の域を出ておらず、保有する長期国債を日銀に売却した資金は当座預金に積み上がった状態であるため、明確には観察されない。
○物価連動国債と利付国債の利回り差であるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)から市場の期待インフレ率のパスを計測すると、QQEの導入で期待インフレ率の水準は高まったが、その後水準に大きな変化は見られない。18年3月の予想消費者物価(CPIコア)上昇率は前年比0.5%程度しかなく、市場期待効果が強く働いているとは言いがたい。
○追加緩和後に日銀が公表した長期国債の買い入れ方針に基づき、3つのシナリオについて検証した。日銀が18年3月まで国債の買い入れを継続し、その後1年半で買い入れを減額する場合、最大460兆円の長期国債をバランスシートに抱える。将来、短期金利を引き上げるタイミングで当座預金(超過準備)に対する利払いが膨らめば、日銀の利益は数年間赤字となる可能性がある。このとき、日銀が財務の健全性に縛られると、金融引き締めが遅れかねない。政府と日銀はこの点について、事前の取り決めを結んでおく必要がある。
○追加緩和により、新規に発行される国債に匹敵する規模の国債を日銀が市場から買い入れることで、国債市場の流動性低下が懸念される。国債の需給を緩めるようなニュースが出たり、日銀が市場とのコミュニケーションに失敗するようなことがあれば、金融市場のボラティリティが高まり、流動性プレミアムとして長期金利に上乗せされるリスクが生じる。また、大規模な国債買い入れは、バブル発生のリスクを増大させる。金融システムの安定性を維持するためのマクロ・プルーデンス体制の強化が急がれる。
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