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JCER Review 60 2005.6

円・ドル為替レート関数の推計
リスクプレミアムモデルによる1990 年以降の実証分析




百武伸英・2004年度予測研究員、商工組合中央金庫

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要旨

 90 年代以降の円・ドル名目為替レート(以下為替レート)を、2国間資産の不完全代替を前提としたリスクプレミアムモデルにより推計することを試みた。その結果為替レートの前期比は、ドル建て、円建て資産の収益率格差と、日本の経常収支の累積と名目GDPから作成したリスクプレミアム項により説明できることが示された。しかしこうした定式化に、物価上昇率格差の要素を説明変数として導入した場合、安定的には有意とならなかった。
 ドル建て、円建て資産の収益率格差については、長期金利格差、短期金利格差、株式の収益率格差を説明変数とした推計を試み、それぞれ有意となった。その中でも長期金利格差を導入した場合に最も有意水準が高かった。また、リスクプレミアムを示す累積経常収支対名目GDP比については、従来の推計では対数線形で導入している例が多いのに対し、本分析では変化率(前期比)として導入した方が有意性が高く、式の説明力も向上することが判明した。すなわち、経常黒字の累積に連れて追加1単位の経常黒字が為替レートに与える影響が徐々に小さくなっていくことが示された。
 推計式を用いて円・ドル為替レートの変動要因の分解を行うと、収益率格差(金利差)が恒常的に円安圧力となっている一方、リスクプレミアム項は恒常的に円高圧力となっている。また、90 年代以降の為替レートは概ねリスクプレミアム項の変動に伴って変動しているものと理解できる。ただし、今回の定式化が今後も有効であるとすると、日本の経常黒字が続く中では経常黒字追加1 単位あたりの為替レートへの影響は徐々に減衰していく。今後は従来と比べて収益率格差が為替レートの変動要因としてより重要となっていくものと考えられる。

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目次

要旨
1.はじめに
2.作成した推計式
3.理論モデルに基づき検討した説明変数
4.推計式に基づく96 年以降の為替レートの変動要因
5.推計期間の拡張
6.結論
<補論1>推計式によるシミュレーション
<補論2>主要変数の単位根検定
<補論3>物価が有意となる場合の推計結果
参考文献
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