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JCER Review 59 2005.6

消費性向上昇の原因を探る
強まるラチェット効果の影響




高村正樹・2004年度予測研究員、第一生命経済研究所

全文全文

要旨

 「家計調査」(総務省、勤労者世帯)によると、1998 年をボトムに消費性向はほぼ一貫して上昇が続いている。消費性向の上昇は、相対的な消費の増加を意味し、近年のように家計の回復が鮮明に見られない中で、消費が底堅く推移するのか、それとも所得と共に減少するのかは、非常に重要なことである。本稿では、ここ数年の景気後退期に、なぜ消費が底堅く推移してきたのかを消費性向を分解することにより探りたいと思う。
 消費性向上昇要因の一つとして、貯蓄を取り崩して消費に回す高齢者の割合が上昇しているという構造的な人口要因がある。ただ、ここ数年の高齢者層の著しい消費性向の上昇は、消費の増加が主因というよりも、むしろ社会保障給付(主に年金と思われる)が大幅に減少し、可処分所得が押し下げられたことにより生じている。今後も、2001 年から導入された段階的な年金給付年齢の引き上げに加え、2003 年から実施されている物価スライド制による給付額の減額が当面続くとみられることから、所得減少による消費性向の押し上げも暫く続くだろう。
 もう一つの要因としては、可処分所得の減少により基礎的支出の割合が高まり、結果としてラチェット効果が強まっていることが考えられる。ラチェット効果が実際にどの程度消費に影響を及ぼしているのかを、消費関数を推計することにより定量的に検証してみると、98 年まで所得の減少に対する消費の押し上げ効果は徐々に弱まっていたが、99 年からは拡大に転じている。特に2003 年にはラチェット効果の影響力が急激に高まった他、2004年も実質可処分所得が7年ぶりに前年水準を上回ったものの、ラチェット効果の影響は前年からほとんど剥落していないことがわかった。

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目次

要旨
1.はじめに
2.SNAベースと家計調査による消費性向の違い
3.高齢化比率の高まりによる消費性向押し上げ
4.ラチェット効果による押し上げ
5.ラチェット効果の実証分析
6.おわりに
参考文献
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