・英国がEU離脱を決めた背景には、移民流入への不安や国家主権にこだわる同国特有の気質などの理由がある。同時に人々の不満のはけ口が欧州連合(EU)に向かった側面も見逃せない。EUが批判対象になりやすい構造的な問題が、その傾向を助長した。
・英国とEUは今後、脱退協定や新たな関係を定める協定の交渉に入るが、手続き終了までに数年はかかる見通し。この間に欧州各国の政治状況が大きく変わる可能性も大きく、欧州は今後不確実性が増す。
・他国でもEU脱退の動きが表面化する可能性がある。また英スコットランドやスペイン・カタルーニャなどの独立運動が勢いづく可能性も大きい。欧州は冷戦終了期以来の地殻変動の時代に入る。
・今後の展望は見通し難いが、(1)移民や格差などの問題は欧州のみならず世界が直面する課題である、(2)求心力が低下してもEUは中期的に欧州の核であり続ける、(3)EUや英国が的確な対応を取れず欧州の地位低下が進めば、影響は経済的な面に限らず民主主義や人権など世界の規範・ルールにも及ぶ――などの視点が欠かせない。
バックナンバー
- 2023/06/30
-
「日本が世界とASEANの架け橋に」
- 2019/09/27
-
実質実効レートに基づく対ドル均衡値の推計
- 2019/04/08
-
「価値の選択と関係性のデザイン」
- 2019/02/21
-
ファーウェイ排除 世界経済への震度
- 2019/01/31
-
貿易戦争のCGEモデル分析