中国の四川省成都市で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は7月24日午後、「世界経済の成長を支えるため、構造改革や金融、財政の政策を各国が個別に総動員する」とした共同声明を採択して閉幕した。「構造改革」は習近平政権の最重要テーマであり、9月の浙江省杭州市におけるG20首脳会議でも、議長国である中国はこれを主要議題とする見通しだ。鉄鋼や石炭などの過剰生産を海外から厳しく指摘されている中国は、首脳会議で構造改革への取り組みを披露して非難に答え、G20を習政権の「晴れの舞台」として演出する思惑だ。
構造改革への自信をちらつかせる中国だが、そんな中、鉄鋼に続く新たな供給過剰問題が浮上しつつある。昨年来、ブームとなったエコカーである。
【ポイント】
- 中国では2015年、電気自動車(EV)などのエコカーの販売台数が爆発的に伸びた。政府の補助金政策が浸透したためで、業界では今年はさらに約2倍の販売を予測している。
- しかし、今年1~6月の販売実績は年間見通しの半分にも満たない水準に止まった。政府が補助金の不正受給を厳しくチェックしたほか、品質の低さなどから消費者がエコカーを敬遠する動きもあるとみられる。
- 一方、メーカーは補助金を当て込んで強気の増産計画を策定。主要部品の電池も含め、メーカーの乱立も目立っている。このままでは供給過剰を避けられない。市場の健全化には、補助金の適正化に加え、外国企業の技術移転によるエコカー本体や電池など部品の品質向上が求められる。
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