[No.145] 景気動向指数(CI)を用いた日本の景気後退確率の推定
―マルコフ・スイッチング・モデルによるアプローチ―
2016/10/26
本稿では、日本の景気動向指数(CI: Composite Index)にChauvet and Hamilton(2005)がマルコフ・スイッチング・モデルに基づいて開発したアプローチを適用し、景気後退確率を推定することを目的としている。ここでは、CIの先行指数を対象に内閣府が事後的に定める景気基準日付の「山」に先行して確率が上昇する様子を観察し、早期警戒(early-warning)のシグナルとして利用可能かどうかを検証している。
各月の翌月までの情報に基づいて導出するChauvet and Hamilton型の景気後退確率は先行指数の動きに敏感に反応し、過去5回の景気後退期のうち3回で早期警戒を正しく発することができた。一方、景気拡張期においても一時的に景気後退確率が上昇する局面がいくつか観察され、景気基準日付を前提とする限り、偽りの警告(false alarm)も発する結果となった。
リアルタイムに景気の先行きを判断するという本稿の趣旨に鑑みて、我々は、先行指数に基づいた景気後退リスクの高まりを早期に警告するシグナルとしてChauvet and Hamilton型の景気後退確率を、そして景気後退期を事後的に特定するための指標としてサンプル期間の情報をすべて用いる平滑化状態確率を参照することを推奨する。
景気後退確率は用いる手法や指標によって解釈が変わり得るため、景気の先行きを判断する際には、複数の手法と指標に基づいた総合的、かつ慎重な見極めが必要である。しかし、景気後退のリスクを早期に検出することは、政策当局者に政策発動のタイミングや規模の示唆を与えるという点で、極めて重要な意味を持つ。
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