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中国・アジアウォッチ

対北朝鮮制裁強化、効果は予断許さず

実効性は中国の対応次第、米中関係も鍵

李 燦雨
  特任研究員

2016/12/06

 北朝鮮が去る9月に実施した5回目の核実験を受け、国連安全保障理事会は11月30日、国連憲章第7章第41条(非軍事的制裁)に基づく制裁決議案(第2321号)を全会一致で採択した。内容は北朝鮮の石炭輸出に対し年間約4億ドル(約450億円)か750万トンの上限を設けるなど以前より厳しい貿易制裁である。
 しかし、この制裁により北朝鮮が資金調達に打撃を受け核・ミサイルの開発を断念する効果があるか否かは予断を許さない。なぜなら、北朝鮮の貿易を通じた資金調達の最大の相手国が中国であり、中国が国連の対北朝鮮制裁決議を真剣に履行するかどうかについて国際社会の懸念がなお存在するからである。

中朝貿易の推移

【ポイント】

  1. 新しく強化した貿易制裁により北朝鮮は2015年基準(約25億ドルの対中輸出)で6億ドル・1100万トン石炭輸出減少となる。鉱物・金属の輸出減少が約2億ドルと見られ、合計約8億ドルの資金調達が減少するという不利益を被ることとなる。
  2. 国連の経済制裁が実効性を持つためには中国が制裁決議の内容通りに制裁を実施することが前提だが、中国は自国の近隣外交の戦略で朝鮮半島安定化を優先している。経済制裁を監視するシステムが不備なうえ、中朝間の経済関係は北朝鮮の経済特区と中国を結ぶ交通インフラ整備が進むなど経済制裁の実効性に疑問が生じている状況である。
  3. トランプ政権の発足で今後、米中関係が緊張局面に向かう場合、中朝関係がむしろ強化されることも予想され、今回の国連の制裁決議の効果は北朝鮮への政治的圧迫に留まる可能性もある。
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