北朝鮮の金正恩労働党委員長の異母兄である金正男氏と見られる北朝鮮外交旅券を持つ男性が2月13日、マレーシアのクアラルンプールで死亡した事件の波紋が広がっている。マレーシアの捜査当局は北朝鮮が関与した殺害事件である可能性が高いと判断。マレーシア政府は北朝鮮籍者のビザ無し入国を6日付で停止し、マレーシア駐在のカン・チョル大使の国外追放を発表した。今後の展開によっては北朝鮮と東南アジアの関係にさらに大きな影響を及ぼす可能性もある。ここでは事件が起こった東南アジアと北朝鮮の関係について分析。北朝鮮と東南アジア諸国の政治・経済関係の歴史を振り返るとともに、今後の見通しについて検討する。
【(上)のポイント】
- 東南アジア諸国は「非同盟外交」を基本とし、ASEAN加盟10カ国すべてが韓国と北朝鮮の双方と国交を結んでいる。北朝鮮も「非同盟外交」の方針で東南アジア諸国との関係を重視してきた。
- 北朝鮮は東南アジアとの経済関係も重視し、2011年末に発足した金正恩政権は発展途上国同士の経済・技術協力、「南南協力」を重視する姿勢を打ち出した。14年以降、ラオス、ベトナム、ミャンマー、インドネシア、シンガポールなどに外相が訪問し、南南協力の具体化に取り組んだ。
- しかし、11年から14年にかけて増えた北朝鮮と東南アジアの貿易は15年に再び後退。16年には北朝鮮の2度の核実験と相次ぐミサイル発射に対する国連安保理の2回の制裁決議でさらに減少したと考えられる。
◆関連レポート◆
シリーズ「北朝鮮と東南アジア」
・【中】つまずいた北朝鮮の「南南協力」戦略――事件でマレーシアとの関係にしこり (李燦雨、伊集院敦)
・【下】制裁の実効性に影響するASEAN諸国の対応――核・ミサイル問題重視も、関係は維持 (李燦雨、伊集院敦)
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