「一国二制度」方式は、中国の最高指導者だった鄧小平氏が提唱したというのが定説である。香港が1997年7月1日、中国に返還され、中華人民共和国という「一つの中国」の下に統合されても、返還後の香港は社会主義体制ではなく、「特別行政区」として資本主義体制と従来の生活様式を2047年まで50年間維持することを保障している。「東洋の真珠」と呼ばれた香港の繁栄と安定を維持するのが主眼だった。「一国二制度」は中国の国際公約であるとともに、中国の悲願である台湾との統一に向けた壮大な “実験”でもある。その実験のいわば舞台となった香港はこの20年間、どのような変貌を遂げたのか。香港の有識者らへのインタビューなどを踏まえ、「一国二制度」をめぐる政治、経済両面の移り変わりや実績を検証し、今後の課題と展望を探った。
【ポイント】
- 香港は1997年7月、英国から中国へ返還され、社会主義の中国において資本主義の制度を50年間維持する「一国二制度」が始動した。中国との経済緊密化協定(CEPA)などで、20周年の節目を迎える香港は「中国化」しつつある。
- 「一国二制度」は外交と軍事を除く「高度な自治」と「独立した司法権」などを保障しているが、香港行政長官を選ぶ普通選挙は実現せず、民主化は停滞している。「香港人」意識の高まりで、中国政府への信頼感も低下している。
- 中国の習近平国家主席が出席予定の7月1日の香港返還20周年記念式典が「一国二制度」の成否を国際社会に示す象徴的な出来事になる。これに影響する3月26日の行政長官選挙でどの候補が選ばれるかが、当面の焦点である。
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「一国二制度」20年の検証
・②【インタビュー】戴耀廷・香港大学副教授 香港の「民主的自治」実現へ―雨傘運動で“離陸”果たした (泉宣道)
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