一覧へ戻る
中国・アジアウォッチ 【韓国新政権の政策と課題】 (上)

多難な合意形成、内政外交で割れた国論

――安保・北朝鮮政策で深まるジレンマ

伊集院 敦
  首席研究員

2017/05/10

 朴槿恵(パク・クネ)前大統領の罷免に伴う韓国の大統領選挙は9日の投開票の結果、革新系の文在寅(ムン・ジェイン)氏が当選し、10日付で第19代の大統領に就任した。2代続いた保守系政権から9年ぶりに革新系政権が誕生した。新大統領は混乱した国政の立て直しや、核・ミサイル開発を加速する北朝鮮への対応などの課題を抱えるが、選挙戦を通じて明らかになったのはむしろ韓国社会の分裂と合意形成の難しさだった。韓国新政権の政策と課題を検討する。

文在寅氏(左)、韓国国会の勢力図(右)

【(上)のポイント】

  1. 革新系の文在寅大統領は内政では公共部門を中心とする雇用創出と、格差・不平等の是正を優先課題に掲げた。対外政策では北朝鮮との対話を重視する姿勢が際立っている。
  2. 新政権は10日の発足時点で政権与党が国会で過半数の議席を握っていない。政策を安定的に推し進めるためには与野党の枠を超えた合意の形成が不可欠だ。他党との連立や閣僚人事などを通じた多数派の形成、政界再編の成否が鍵を握る。
  3. 対外関係では北朝鮮政策や安保政策をめぐる日米とのズレをどのように解消するかが焦点だ。関係国の利害が錯綜する北朝鮮問題で韓国が独自色を発揮できる余地は短期的には限られる。各国との意見調整を通じ、現実的な路線を進められるかどうかが焦点となる。
関連レポート

「韓国新政権の政策と課題」
【下】「雇用・福祉」優先、見えぬ「成長」の道筋――残る供給過剰、企業の構造調整が重要課題に (李燦雨)

※旧サイト(~2018.8月)の中国・アジア研究、アジア予測、コラムなどの一覧はこちらから

キーワード