北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の相次ぐ発射実験に続き、9月3日には通算6回目の核実験に踏み切った。爆発規模は過去最大と見られ、国連安全保障理事会などで北朝鮮への制裁強化をめぐる論議が活発になる見通し。中国やロシアからの石油供給の扱いが最大の焦点となる見通しだが、国際社会による制裁の実効性を上げるには、北朝鮮が物資調達などの拠点と位置づけてきた東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の取り組みも欠かせない。
【(下)のポイント】
- 北朝鮮と東南アジア諸国の貿易は、輸出入全体の9割を占める中朝間の貿易パターンとは違った特徴がある。中朝間に多い委託加工貿易がほとんどなく、北朝鮮にとっては自国が必要とする動物性調製品、糖類、パーム油、スズ、ゴム製品、電子機器などの品物調達と、工業製品の輸出市場としての可能性がある地域だ。
- ASEANに加盟する10カ国はすべて韓国、北朝鮮の双方と外交関係がある。北朝鮮との取引で得られる経済的利益は大きくなく、相互の政治的関係が悪化すれば経済関係は直ちに断絶できる程度の関係だ。しかし「非同盟外交」を基本とする国が多く、北朝鮮の核・ミサイル危機が高まる中でも、外交関係自体は維持している。
- 東南アジアの中には労働者派遣や武器取引など北朝鮮の外貨獲得や工作活動の拠点になってきた国も少なくない。経済面で後ろ盾となってきた中国やロシアとともに、東南アジア諸国の取り組みも国連制裁の実効性に直接的な影響を与える。
◆関連レポート◆
シリーズ「北朝鮮と東南アジア」
・【上】揺れる「非同盟」の外交と経済関係――「南南協力」掲げるも制裁で貿易減少へ (李燦雨)
・【中】つまずいた北朝鮮の「南南協力」戦略――事件でマレーシアとの関係にしこり (李燦雨、伊集院敦)
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