2018年5月9日、マレーシアの第14回総選挙が実施され、即日開票の結果、統一プリブミ(PPBM)党首のマハティール・モハマド元首相率いる野党連合・希望連盟(PH)が勝利した。PHは改選前の89議席を大きく上回る過半数の113議席を獲得。かつて22年間にわたり政権を担ったマハティール氏が92歳という「世界最高齢」で15年ぶりに首相の座に返り咲いた。
統一マレー国民組織(UMNO)党首のナジブ・ラザク首相が率いる与党連合・国民戦線(BN)は133議席から79議席へと大幅に議席数を減らした。UMNOは1957年の英国からの独立以降、政権を担ってきたが、事前予想に反して敗北を喫し、同国で初めてとなる政権交代を許す結果となった。
【ポイント】
- 2018年5月9日のマレーシア総選挙で、マハティール・モハマド元首相率いる野党連合・希望連盟(PH)が選挙前の大方の予想を覆して勝利し、1957年の独立以来、初めての政権交代を実現した。 2. 統一マレー国民組織(UMNO)を中心とする与党連合・国民戦線(BN)の敗因は、物品・サービス税(GST)などを主因とする物価高、政府系ファンド「ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)」を巡るナジブ首相の汚職疑惑が都市部を中心に有権者の怒りを招いたことにある。野党連合が強いリーダーシップが期待できるマハティール元首相を担ぎ出したことも大きい。
- 新政権最初の課題はGSTの廃止やインフラ投資計画の見直しを含む「就任後100日計画」の実現である。家計負担の軽減、消費の喚起が期待されるが、一方で財政状況の悪化や民間投資の鈍化が懸念される。
- 予想外の政権交代に心穏やかでないのはおそらく中国とタイ、カンボジアだろう。マハティール首相は中国が関連するインフラ事業の見直す見通し。タイ軍事政権は来年2月にも総選挙を実施する予定だが、タクシン派が勢い付く可能性がある。直近では7月にフン・セン首相の独裁色が強まるカンボジアで総選挙が実施される予定だ。
◆関連レポート◆
・【寄稿】マレーシア政権交代: 新政策、代替財源やプロジェクト見直しに注目 短期的に不確実性、通年では成長ペース維持
・アジア・コンセンサス調査
※旧サイト(~2018.8月)の中国・アジア研究、アジア予測、コラムなどの一覧はこちらから
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