2018年度研究生
「経済百葉箱」は当センター経済予測班による分析リポートです。このうち「番外編」は、新年度から研修を開始した企業・団体からの派遣研究生が、「第一弾」としてまとめたリポートです。
第174回改訂短期経済予測(SA174R、2018年6月8日公表)、第44回中期経済予測(2018年3月23日公表)を踏まえ、3班に分かれて、異なるシナリオを描きました。
短期担当の2班は、米国とその他主要国との貿易戦争を起点とした「景気低迷シナリオ」と、中国経済の「量」から「質」へのシフトが周辺国経済に好影響をもたらす「好景気シナリオ」を示しました。中期担当の班は、無形資産の活用による成長シナリオを示しました。
内容的には詰め切れておらず、粗削りな面も残りますが、当センターの経済予測を補完する意味で公表する次第です。
短期経済予測班
■短期予測①:「外需」を失い、日本経済は失速へ―米国発の貿易戦争が深刻化―
▼要旨▼・米トランプ政権による主要貿易赤字国への追加関税措置に対し、各国は報復関税措置を実施、貿易戦争が発生する。
・その影響は関連製品のサプライチェーンを通じて輸出入の停滞という形で世界経済へと波及する。同時に円高が進み、日本経済も輸出が減少。
・日本の実質国内総生産(GDP)成長率は2018年度に1.0%(SA174R比0.2%ポイント下振れ)、2019年度に0.3%(同0.6%ポイント下振れ)を予測。
■短期予測②:アジアの成長を取り込む日本経済―中国経済の「量から質への変革」に勝機―
▼要旨▼・中国の製造業の「量」より「質」を重視した成長戦略で経済成長が持続することにより、日本をはじめとした東アジア経済が恩恵を受ける上振れシナリオを想定。
・中国の製造業の生産性向上やハイテク化等の過程で、日本や東アジア諸国からの輸出が増加する。具体的には、製造業の自動化・情報化のための半導体や、半導体製造装置、工作機械などの輸出増加が期待される。
・中国製造業向けの製品輸出に加え、東アジア諸国から日本へのインバウンド需要が増加すること、越境電子商取引(EC)による中国向け消費財輸出が拡大することで、日本のGDP成長率は18年度に1.8%、19年度に1.6%と上ぶれる。
中期経済予測班
■中期予測①:無形資産拡充で生産性向上へ―中小企業を導く2つのチカラ―
▼要旨▼・産業構造・情報技術の高度化が進む中、付加価値を生み出す源泉は有形資産から無形資産へと移りつつあり、特に中小企業の無形資産活用による生産性の底上げが期待される。
・中小企業の抱える資金面・人材面での問題を、「資金調達手段の多様化(=金融のチカラ)」、「中核人材の育成(=人のチカラ)」の2つのチカラが解決し、日本の労働生産性を高める。
・中小企業の無形資産ストック増加シナリオでは、第44回中期予測と比べ、2030年時点の労働生産性は10.66%上昇し、実質GDP成長率は1.25%ポイント程度高まる。
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