GAFAも嘆く“日本の保守性”、脱却が不可欠
2030年、三大都市圏と地方圏の産業未来図
地方圏--特色ある製造業と観光による外需獲得を
三大都市圏--高度人材を活用したベンチャー創出を
2019/03/20
3月14日公表の「第45回中期経済予測」をベースに三大都市圏、地方圏に分けて2030年の産業別予測をすると、都市も地方も厳しい現実が浮かび上がってきた。都市は、第4次産業革命時代におけるイノベーション創出機能を果たせていない。年功序列といった日本独自の雇用慣行等が障壁となり、イノベーション創出において重要な高度人材の獲得競争で国際的に遅れをとっているからだ。地方は人口減による内需減少に伴い、製造現場が海外や他地域へ移転、サービス業も衰退が著しい。
東京を中心とした大都市は、欧米やアジアの主要都市との競争に負けないレベルの高度人材定着策が不可欠だ。イノベーション力に富むベンチャーを日本の競争力に結びつける孵卵器の役割を担う必要がある。地方は必須となる外需獲得に力を集中するべきだろう。観光を中心とするインバウンド(訪日外国人)消費を取り込み、地域ブランドとして確立した商品の製造拠点となることが不可欠だ。合わせて経営者だけでなく、技術者、労働者側も生産性を強く意識した成果の評価や働き方を意識することが極めて重要だ。これらの取り組みを実行するには、GAFAも嘆くような保守性から日本が脱皮することが欠かせない。その成否は個別の都市・地方だけでなく、日本全体の浮沈も左右する。
執筆 研究生・五十嵐涼(曙ブレーキ工業)、石田雄飛(八十二銀行)、木村桜子(ヤマトグループ総合研究所)、吉田匡崇(足利銀行)
監修 主任研究員・小林辰男
<ポイント>
図1 関東を中心に改革で成長力は大きく向上する
(注)各地域の実質産出額2021-30年の年平均成長率
(資料)日本経済研究センター『第45回中期経済予測』
3. 2030年地域予測(標準シナリオ)
3.1 地方
3.1.1 地方間でも明暗の分かれる成長率
3.1.2 地方の課題
3.2 都市
3.2.1 力強さに欠く都市経済
3.2.2 イノベーション創出への課題と対応ーー人材獲得、協働がカギ
4. 改革シナリオ
4.1 改革シナリオの前提
4.1.1 地方――地域特性を高める産業集積が進展
4.1.2 地方――訪日誘客支援空港を活用したインバウンド取り込み
4.1.3 都市――イノベーションによる生産性向上
4.2 改革シナリオによる効果――関東で成長率0.9ポイント押し上げ
4.2.1 地方 -四国- パルプ・紙産業の集積が有力策
4.2.2 都市 -関東-高度人材の受け入れで成長率の大幅増も
4.2.3 都市 -中部-輸送用機械、生産用機械の集積が要
5.改革に向けた取り組みと課題
5.1 地方の成長に向けた改革案
5.1.1 強みを伸ばす産業集積
5.1.2 地方に海外との接点創出を
5.2 都市の成長に向けた改革案
5.2.1 高度人材獲得に向けた雇用制度改革――生産性の高さで評価を
5.2.2スタートアップ創出への規制改革
5.2.3 高度技術・人材の活用、労働者の意識にも課題
参考図表
旧サイト掲載分(~2018年3月)はこちらをご覧ください。
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