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中国・アジアウォッチ シリーズ企画「欧州、クリプト経済の実像」 (第1回)

ブロックチェーンに2兆円規模の資金流入

「冬の時代」超え、暗号通貨以外の応用拡大

真鍋 和也 (研究生)
   
上原 正詩
  主任研究員

2019/03/28

 ブロックチェーン技術が注目されている。「分散型台帳技術(DLT、Distributed Ledger Technology)」とも呼ばれ、売買記録などのデータを一元的に集中管理するのではなく、暗号化してネットワーク上に分散して共有・保存する。データの改ざんが難しく安全で、かつ低価格でシステムの構築ができると期待されている。DLTはデジタル空間における送金や決済など資金のやり取りの記録する技術として2008年に提案され、「ビットコイン」というインターネット上の「暗号通貨」して急速に普及した。その後、「イーサリアム」の登場で暗号通貨以外の応用が拡大している。18年に入り暗号通貨の価値が急落する「クリプトの冬」を迎えたが、DLT関連の起業の動きは衰えるどころか、勢いを増している。関連企業への資金流入は18年に2兆円規模に達した。
 DLTビジネス勃興の中心の1つが欧州だ。DLTはグーグルやアマゾン・ドット・コムなどの米国のテック・ジャイアントが支配する現在のネットビジネスの世界(ウェブ2.0)を根底から覆し、個人情報(プライバシー)をより重視する新しいネット世界「ウェブ3.0」をもたらすとも言われる。個人のデータを重視し企業にその厳格な管理を求める「一般データ保護規則(GDPR)」の施行も追い風だ。ネットワーク参加者間でデータを共有するDLTは、巨大IT企業のデータ独占に一石を投じうるため、米国優位のデジタル経済を覆す手段として注目されている。DLTを基盤とした「クリプト(暗号)経済」の現状を欧州に探る。

世界のDLT関連企業の資金調達額(左)、DLTを使ったアプリ「ダップス」の数(右)

【第1回のポイント】

  1. ブロックチェーン技術が注目されている。「分散型台帳技術(DLT、Distributed Ledger Technology)」とも呼ばれ、売買記録などのデータを一元的に集中管理するのではなく、暗号化してネットワーク上に分散して共有・保存する。データの改ざんが難しく安全で、かつ低価格でシステムの構築ができると期待されている。
  2. DLTはデジタル空間における送金や決済など資金のやり取りの記録する技術として2008年に提案され、「ビットコイン」というインターネット上の「暗号通貨(cryptocurrency)」として急速に普及した。その後、「イーサリアム」の登場で暗号通貨以外の応用が拡大している。
  3. 18年に入り暗号通貨の価値が急落する「クリプトの冬」を迎えたが、DLT関連の起業の動きは衰えるどころか、勢いを増している。DLT関連企業への資金流入は18年には2兆円規模に達した。
  4. DLTビジネス勃興の中心の1つが欧州だ。DLTはグーグルやアマゾン・ドット・コムなどの米国のテック・ジャイアントが支配する現在のネットビジネスの世界(ウェブ2.0)を根底から覆し、個人情報(プライバシー)をより重視する新しいネット世界「ウェブ3.0」をもたらすとも言われる。DLTを基盤とした「クリプト(暗号)経済」の現状を欧州に探る。