▼ポイント▼
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- 長らく低迷してきた米国の賃金が上昇している。これまで労働者の構成が低スキル労働者にシフトしてきた点が、賃金の伸びを抑えてきた。最近では、低スキル労働者のスラック(緩み)が枯渇し、この要因が解消されつつある。労働者の構成変化が一服するなかで、低スキル労働者の賃金が伸びを高めており、全体の平均賃金の上昇につながっている。
- スラックが枯渇するもとで、今後、転職市場が活発化する可能性がある。好況期の米国では、転職者が増加するとともに、賃金が伸びを高める傾向にあり、その兆しがすでにみられる。労働生産性が伸び悩んでいる点を踏まえると、こうした需給タイト化による賃金上昇はインフレ圧力を高めることにつながる。
- 賃金・物価の上昇圧力は、今後の金融政策に影響を及ぼしうる。米連邦準備理事会(FRB)は、弱いインフレ圧力を前提に、これまでの引き締め路線を停止している。仮に、世界経済の悪化と米国のインフレが同時に進行すると、緩和か引き締めかを巡る不透明感が強まり、グローバルな金融市場が混乱する恐れがある。さらに、低インフレの打開策として今後検討される「物価水準目標」の導入に否定的な見解が増える可能性もある。
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