中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が3月5日、首都・北京市で開幕した。会議の冒頭に行われた李克強首相による「政府活動報告」(以下、「報告」)は、その多くを国内経済に関する情勢の分析や景気刺激策の説明に割いた。昨年の全人代は国家主席の任期制限を撤廃するための憲法改正や国家副主席ら首脳人事が焦点となり政治色が濃かったが、今年は一転した形だ。報告は米中対立の影響などによる景気減速への危機感を強調し、あらゆる政策を総動員して成長目標を死守するという、政府の強い決意を宣言する内容となった。
【ポイント】
- 5日に開幕した中国の全国人民代表大会(全人代)において、李克強首相は今年の実質経済成長率の目標を、「6.5%前後」とした昨年の目標から引き下げ、「6~6.5%」とすることを明らかにした。
- 李首相は国内の景気減速に強い危機感をにじませ、大型減税や公共投資の積み増しなどの財政政策と金融政策を総動員し、成長を維持する方針を示した。財政政策は減税とインフラ投資が柱で、実施規模は約4兆元にのぼるとしており、リーマン・ショック時に次ぐ「新4兆元対策」とも言える。
- 中国共産党指導部は構造改革派と景気重視派に分かれるとされるが、李首相が示した政府方針からは、両派の歩み寄りの可能性がうかがえる。米中対立の行方が混迷する中、指導部が団結して危機を乗り切ろうという決意の表れともいえよう。
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※本リポート巻末には3月5日に李克強首相が演説した政府活動報告全文の日本語訳も掲載しております。ご参照ください。
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