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中国・アジアウォッチ シリーズ企画「北米、飛躍する起業都市」 (第1回)

突出するベイエリア、ユニコーン6割集中

背後にアクセラレーター「Yコンビネーター」

上原 正詩
  アジア予測室長 兼 主任研究員

2019/05/09

 米中貿易摩擦の背景には、中国のイノベーション力に対する米国の警戒感がある。ベンチャーキャピタル(VC)の投資やユニコーン企業の数などでは中国に一時勢いがあったのは確かだ。しかし直近の動向を見ると米国が盛り返している傾向が読み取れる。中国がイノベーションで追い上げているとはいえ、新しいアイデアやビジネスを生み出す米国の底力は健在だ。
 イノベーションを創出する米国の源泉は、シリコンバレーを中心とするスタートアップ生態系(エコシステム)にある。そしてその生態系形成のエンジンとなり、中核的な存在となっているのが「シード・アクセラレーター」だ。起業家の育成、創業したてのスタートアップの成長を促す投資・教育機関だ。
 日本経済研究センターではデジタル経済をけん引する米国西海岸の3都市圏(サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル)、さらにカナダのバンクーバーを3月に訪問し、アクセラレーターを中心にエコシステムの実態や地域経済との関係、新しいイノベーションのトレンドを探ってきた。特に米国3都市圏は第4回アジア中期予測「アジア、浮かぶ都市、沈む都市」で、2030年時点の1人当たり名目地域総生産(GRP)で77都市中トップ5に入ると予測された都市である 。本シリーズでは、スタートアップのデーターベース分析と合わせて、北米のスタートアップ都市の秘密をリポートする。

世界のVC投資額(左)とVC投資件数(右)

【第1回のポイント】

  1. 2018年から本格化した米中ハイテク摩擦が続いている。摩擦の背景には中国におけるイノベーションの拡大が米国の警戒心を引き起こしたことがある。
  2. ベンチャーキャピタル(VC)の投資動向などをみると、起業・イノベーション大国の米国を中国が一時追い上げたが、直近では米国が盛り返しつつある。
  3. ユニコーン企業の分布をみると、米国国内ではベイエリアが他の地域を圧倒する。特にサンフランシスコにユニコーン企業が集中している。
  4. ユニコーン輩出の牽引役はシード・アクセラレーターで、特にYコンビネーター(YC)の実力は際立っている。