日本経済研究センターではデジタル経済をけん引する米国西海岸の3都市圏(サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル)、さらにカナダのバンクーバーを3月に訪問し、アクセラレーターを中心にエコシステムの実態や地域経済との関係、新しいイノベーションのトレンドを探ってきた。特に米国3都市圏は第4回アジア中期予測「アジア、浮かぶ都市、沈む都市」で、2030年時点の1人当たり名目地域総生産(GRP)で77都市中トップ5に入ると予測された都市である 。本シリーズでは、スタートアップのデーターベース分析と合わせて、北米のスタートアップ都市の秘密をリポートする。本レポートはその第5回。
- 人口で全米15位の都市圏シアトルにはテックジャイアントのうちマイクロソフト、アマゾン・ドット・コムの2社が本社を構える。シアトルは近年、ハイテク技術者がベイエリアから移り住む都市として注目を集めている。
- シアトルのスタートアップ生態系の中心はマイクロソフトだ。リアルネットワークス、エクスペディアの創業者など同社を起源に持つ起業家は多い。そのアクセラレーターもシアトルの中では突出した実績を誇る。
- ワシントン大学も生態系の重要なプレーヤーで、インキュベーション施設「コモーション」などでスタートアップを育成する。アマゾンもマイクロソフト、ワシントン大とシアトル生態系トライアングルの一角をなす。同社のクラウドサービスは起業コストを劇的に下げ、シアトルを「クラウド・シティ」に押し上げる原動力となっている。
- AI人材を狙い、アリババ集団や百度など中国のテックジャイアントも相次ぎシアトルに進出している。一方、日本企業とシアトルのスタートアップをつなぐ取り組みも始まった。
・第4回アジア経済中期予測 「アジア、浮かぶ都市、沈む都市」
シリーズ企画「北米、飛躍する起業都市」
・【第1回】突出するベイエリア、ユニコーン6割集中――背後にアクセラレーター「Yコンビネーター」
・【第2回】ベイエリア、サンフランシスコに重心移動――アクセラレーター、差別化競う
・【第3回】シリコンバレーでムーンショットを狙え――シンギュラリティ大学など世界的課題に挑戦
・【第4回】ロサンゼルスにシリコンビーチ出現――サンタモニカに起業の風、モビリティ関連も注目
・【第6回】バンクーバー、デジタル娯楽産業が勃興――「カスカディア回廊」と新移民政策が追い風に
シリーズ企画「中国、AI 、イノベーション」
・【上】中国、イノベーション先進国に――特許、論文数で米凌駕、北京中心にAI振興
・【中】北京、大学とVCが集積――創業ストリートなど出会いの場も充実
・【下】合肥、音声認識で「声谷」形成――科大訊飛と中国科技大が核に
※旧サイト(~2018.8月)の中国・アジア研究、アジア予測、コラムなどの一覧はこちらから
バックナンバー
- 2020/12/08
-
中国の自動車メーカー、一部で生産停止か
- 2020/11/20
-
大手企業の社債デフォルト、過去最大規模に
- 2020/10/16
-
パランティアなどソフト系、シリコンバレー牽引
- 2020/10/07
-
米シリコンバレー、自動運転産業が勃興
- 2020/10/07
-
動き出すか 中国の燃料電池車