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中国・アジアウォッチ シリーズ企画「北米、飛躍する起業都市」 (第5回)

シアトル、マイクロソフトが生態系中心に

アマゾン、ワシントン大とトライアングル形成へ

上原 正詩
  主任研究員

2019/06/06

 日本経済研究センターではデジタル経済をけん引する米国西海岸の3都市圏(サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル)、さらにカナダのバンクーバーを3月に訪問し、アクセラレーターを中心にエコシステムの実態や地域経済との関係、新しいイノベーションのトレンドを探ってきた。特に米国3都市圏は第4回アジア中期予測「アジア、浮かぶ都市、沈む都市」で、2030年時点の1人当たり名目地域総生産(GRP)で77都市中トップ5に入ると予測された都市である 。本シリーズでは、スタートアップのデーターベース分析と合わせて、北米のスタートアップ都市の秘密をリポートする。本レポートはその第5回。

シアトル中心部(スペースニードルより)

【第5回のポイント】

  1. 人口で全米15位の都市圏シアトルにはテックジャイアントのうちマイクロソフト、アマゾン・ドット・コムの2社が本社を構える。シアトルは近年、ハイテク技術者がベイエリアから移り住む都市として注目を集めている。
  2. シアトルのスタートアップ生態系の中心はマイクロソフトだ。リアルネットワークス、エクスペディアの創業者など同社を起源に持つ起業家は多い。そのアクセラレーターもシアトルの中では突出した実績を誇る。
  3. ワシントン大学も生態系の重要なプレーヤーで、インキュベーション施設「コモーション」などでスタートアップを育成する。アマゾンもマイクロソフト、ワシントン大とシアトル生態系トライアングルの一角をなす。同社のクラウドサービスは起業コストを劇的に下げ、シアトルを「クラウド・シティ」に押し上げる原動力となっている。
  4. AI人材を狙い、アリババ集団や百度など中国のテックジャイアントも相次ぎシアトルに進出している。一方、日本企業とシアトルのスタートアップをつなぐ取り組みも始まった。