20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に出席していた米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席は6月29日、大阪市内で会談し、5月から中断したままとなっていた貿易協議を再開することで合意した。両国経済への深刻な影響が懸念された米国による3000億ドル(約33兆円)相当の追加関税「第4弾」の実施は先送りとなったほか、5月から禁止していた中国の情報通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に米国企業が部品を販売することも認める方針に転換した。これにより、世界中が懸念していた米中の貿易戦争の激化は、ひとまず回避された形となったが、今回の会談でも中国側は米国が求める構造改革や規制緩和、補助金問題などについて、依然として具体的な方策を示さず、あいまいな態度のままだった。貿易協議が再開されても双方が妥協点を見出すのは容易ではなく、米中対立の先行きはなお五里霧中であることに変わりはない。
【ポイント】
- 6月29日の米中首脳会談は中断していた貿易協議の再開で合意した。米国による3000億ドル相当の追加関税実施は先送りとなったほか、中国の華為技術(ファーウェイ)に米国企業が部品を販売することも認められた。
- ただ、今回の合意は「一時的な休戦」に過ぎない。米中の対立は今や制裁関税合戦だけにとどまらないからだ。首脳会談でとりあえず部分解除の方向となったが、米国は中国企業を標的にし、世界各国に彼らとの取引中止を迫っている。中国も対抗してレアアースの禁輸をちらつかせるなど、互いにあらゆる手段を駆使して、圧力をかけあう戦いになっている。
- 米国では中国との対立を「文明の衝突」と見る向きもある。事態の打開は容易ではなく、対立の長期化は避けられない。日本企業は米中の行方を注意深く見守りつつ、自社の中国ビジネスを今後、どう展開していくべきか、改めて戦略を練り直す必要があろう。
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