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経済百葉箱

経済百葉箱 番外編<2019年度>

 

2019/07/05

 2019年度研究生

 「経済百葉箱」は当センター経済予測班による分析リポートです。このうち「番外編」は、新年度から研修を開始した企業・団体からの派遣研究生が、「第一弾」としてまとめたリポートです。
 今年度は第45回中期経済予測(2019年3月22日公表)を踏まえ、2班に分かれて、異なるシナリオを描きました。
 1つの班は、高齢層に偏りがちな資産を若年層に移転させる施策によって、リスク性資産投資へより多くの資金が回り、起業が活発になることで成長率が高まる上振れシナリオを示しました。
 もう1つの班は、人工知能などの新技術により定型的な業務が自動化される一方で、生産性の高い仕事への働き手の教育、移動がうまくいかない場合に、多くの人が失職したり低賃金の職につくことになる下振れシナリオを示しました。
 内容的には詰め切れておらず、粗削りな面も残りますが、当センターの経済予測を補完する意味で公表する次第です。

■上振れシナリオ 「ベンチャー企業が成長の源泉―若年層を通じたリスクマネー供給の拡大を―」

▼要旨▼
 わが国の経済は、労働・資本を付加価値に結びつける効率性を映す全要素生産性の低迷を背景に、伸び悩んでいる。生産性が伸びない背景には起業の少なさがあると考え、起業の活発化により経済成長が加速するシナリオを描いた。起業が増えれば、新技術の開発や実用化、ビジネスモデルの創出のきっかけになる。ただし、現状では起業希望者に対する資金的な制約が、起業の阻害要因となっている。
 資金制約を解消し、リスクマネー供給の拡大を通じて起業数が増加する場合、標準シナリオと比べて、2030年度時点での開業率は2.2%ポイント程度上昇し、実質GDPは3.6%~6.7%上ぶれる。

■下振れシナリオ 「技術革新に適応できないニッポン―低成長に沈む令和時代―」

▼要旨▼
・現在進行中の技術革新(人工知能、IoT、産業用ロボット、RPAなど)によって、労働者は定型的な業務から解放される。他方で、新技術に適応できない労働者の生産性の低い業務へのシフトや、失業が発生し、経済成長に悪影響を及ぼす、また所得格差の拡大を引き起こす可能性もある。
・技術革新にうまく適応できない場合に、「定型業務」の職を失った労働者のうち、より生産性の低い仕事に移動する割合や、失業者が増えると想定し、経済成長への影響を試算した。実質GDP成長率は0.3%ポイント程度低下し、2030年度のGDPは約20兆円押し下げられる。
・さらに、所得格差の拡大は、教育への投資抑制を通じて、中長期的な経済成長に悪影響を及ぼす可能性がある。
・このような事態を回避するためには、(1)教育機関や企業における労働者の能力育成とビジネス・マッチング機能の強化、(2)負の所得税やベーシックインカムといった再分配政策の実施が考えられる。


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