2019年3月期の全国銀行決算は、全業態で最終減益となり、9年ぶりに3兆円の大台を割り込んだ。預貸利ざやの縮小を受けて粗利益が減少したほか、システム関連の減損という特殊要因もあった。貸出金利回りは経費率とほぼ同水準まで下がり、コスト削減による利ざやの確保は限界を迎えつつある。貸出金の増加を上回る預金の増加によって都市銀行の預貸率は10年連続で低下、過去最低を更新した。長期金利がマイナス圏に低下したことで、都市銀行の国債保有残高は18年度には再び減少に転じた。低金利環境の長期化で、貸出業務の収益環境の改善が見込みにくい中、メガバンクや地方銀行では外債や投資信託といったリスク性資産運用に傾斜するなど、リスクテイク姿勢を強めている。この間、地方銀行や第二地方銀行による貸倒引当金の積み増しは鈍化しており、景気が悪化すると銀行の財務内容に負の影響を及ぼす可能性が高まっている。
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