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朝鮮半島リポート (第11回)

景勝地・金剛山の観光事業めぐり外交ゲーム

北朝鮮が独自開発の方針、韓国はジレンマ

朝鮮半島経済研究会
   

2019/11/28

 朝鮮半島有数の景勝地である北朝鮮東部の金剛山観光をめぐり、北朝鮮が南北協力事業の一環として韓国側が観光地区に建設した施設の撤去を通告し、独自に開発を進める構えを見せている。北朝鮮は南北経済協力の中核である金剛山観光事業と開城工業団地の再開を求めてきたが、国連安保理の経済制裁を順守せざるをえない韓国が実施に踏み切れないことに失望を隠さない。今回の動きは韓国の文在寅政権への揺さぶりに加えて、非核化をめぐる協議を前にした米国へのけん制の面もあり、中国なども巻き込んだ駆け引きが展開されそうだ。

【第11回のポイント】

① 北朝鮮が南北協力事業の一環として北朝鮮東部の金剛山観光地区に建設した韓国側施設の撤去を通告した。金正恩委員長の指示に基づく措置で、北朝鮮はこれ以上韓国に依存せず、独自で観光開発を進める姿勢を示している。

② 韓国政府は「自力で金剛山観光再開の準備を進める意志を明らかにすることで、観光再開を促す意図」と北朝鮮の狙いを分析するが、今回の事案が離散家族再会など南北関係全般に影響を及ぼしかねないと懸念し、対応に苦慮している。制裁維持の米国と北朝鮮の間でジレンマに直面している。

③ 北朝鮮は国連制裁の下での外貨獲得手段として観光事業に期待をかけ、独自開発開発路線を進めるうえで中国やロシアとの協力を強化している。観光をめぐる国際関係の変化は、非核化をめぐる今後の米朝協議や朝鮮半島情勢全般に影響を与える可能性がある。

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