本リポートでは、マクロ・ミクロの両面から日本の金融環境をめぐるリスクを総点検する。日本銀行は長短金利操作付き量的・質的金融緩和を開始した16年9月以降、国債買い入れを減額している。減額が続けば早晩、日銀のマネタリーベース供給が減少に転じる恐れもある。マネタリーベースを拡大し続けるには、国債買い入れ以外の経路に頼る必要があるが、選択肢は限られる。長引く低金利環境で地域金融機関の経営が厳しさを増す中、19年9月期から投資信託の解約損益を除くコア業務純益の公表が始まった。解約益への依存度を高める一方、高めの配当を維持する銀行もあり、自己資本の状況に警戒が必要である。他業種との提携など業界再編の動きは、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた第一歩と言える。議決権保有や他の金融機関への出資制限の緩和はこれを後押ししている。だが、日銀の政策の手詰まりや地域金融機関の経営環境がさらに悪化すれば、金融市場のストレスが上昇し、金融システム不安のリスクが高まりかねない。
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