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金融研究

新型コロナで金融市場のストレスが増大
―デジタル化と金融市場改革で進む金融業の再定義―

2019年度金融研究班報告③:金融ショックの再来

主査:左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員
総括:宮﨑 孝史
  副主任研究員
委託研修生:中野雅貴、吉田光
   

2020/03/26

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界の金融市場を揺るがしている。感染防止に向けた外出規制や渡航制限が各国で設けられ、経済活動に急ブレーキがかかった。各国・地域の中央銀行は経済への急激な下押し圧力を和らげるため、政策金利引き下げや量的緩和拡大を急いでいる。日銀も3月16日に3年ぶりの追加緩和に踏み切ったほか、FRBはついに無制限の量的緩和を決めた。ドル資金に対する需要は米国内のみならず、グローバルに増大している。国内では中小・零細企業や個人だけでなく、大企業の資金繰りへの配慮も必要になりそうだ。
 銀行を取り巻く環境は人口減少や低金利環境の長期化を背景に厳しさを増している。地域銀行は店舗統廃合のほか、越境貸出で収益獲得を狙うが、情報通信技術(ICT)を背景に急成長する新形態銀行の収益性はすでに地銀と並ぶ。リブラや中央銀行デジタル通貨発行の議論、東京証券取引所の上場基準見直しと新株価指数への移行を目指した市場改革、世界的な金利指標LIBORの廃止など、国内外の金融市場を取り巻く環境は大きく変化している。金融業の再定義が必要になってきた。