中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が5月22日、首都・北京市で開幕した。会議で李克強首相は「政府活動報告」(以下、「報告」)を行い、世界に先駆け新型コロナウイルスを抑え込んだと「勝利宣言」するとともに、コロナとの戦いで疲弊した国内経済をいかに立て直すかという「戦後復興策」の説明に多くを費やした。復興の柱は財政出動と金融政策の2本立てで、早期の平常モード復帰を目指す。ただ、中国を巡る経済情勢は国内の需要不足に加え、依然としてコロナ禍が収束しない海外の混乱による輸出の先行き不安が強まっている。米国との対立が再び先鋭化するというリスクも抱えるなど極めて流動的なため、通例となってきた成長率の目標値提示を今回、初めて避けた。
【ポイント】
- 22日に開幕した全人代において、李克強首相は新型コロナの感染拡大で疲弊した国内経済に対する、強い危機感を鮮明にした。立て直しのため、財政出動と金融緩和の2本立てによる景気刺激を急ぐ構えだが、情勢は極めて流動的で、成長率の目標は数値を提示しなかった。
- 財政出動では13年ぶりの特別国債を発行するなどして2兆元規模を上積みし、地方でのインフラ投資を加速させる。金融政策は「預金準備率と金利の引き下げなどの手段を総合的に活用する」とした。一方、対立が深刻化する米国との関係については多くを言及しなかった。
- 足元の経済情勢は極めて厳しい。特に雇用問題は深刻。失業対策は最優先課題であり、全人代で決める施策をもとに早期に有効な手段を打たないと、社会の不安定化と政権への不満が高まる。危機対応のため、指導部は統制を一段と強化し、それがチャイナ・ビジネスに影響を与える可能性もある。
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本リポートに連動して、当センターの会員向けに、5月22日に李克強首相が演説した政府活動報告全文の日本語訳も掲載しております。ご参照ください。
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