日本銀行は5月から上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の買い入れを「市中流通残高」ベースに切り替えた。これまで各銘柄の時価総額に比例する形で買い入れていたが、今後は日銀が保有する分を除く市中流通残高に応じた買い入れに変わる。買い入れ方針の見直しにより、①ETFの買い入れ額のうち、東証株価指数(TOPIX)に連動するETFの比率が低下し、日経平均株価やJPX日経400に連動するETFの比率が高まる、②時価総額の小さい銘柄の購入割合が相対的に高まるため、運用会社の競争促進と市場の活性化につながりやすくなる、③日銀保有分を除いた残高に注目することで、浮動株の定義見直しを含む東京証券取引所(以下、東証)の市場改革に向けた第一歩とみられる。
ただ、市場参加者は今後、日銀が保有するETFやJ-REITを銘柄ごとに割り出した上で、市中流通残高に応じた日銀の買い入れ額と株価への影響を予想することになるため、これまで以上に不確実性を伴う。ETFの場合、日銀が直接議決権を行使することはないだけに、コロナ禍収束後の企業ガバナンスを強化する観点からも、日銀にはこれまで以上にETFの買い入れに関する情報開示と説明責任が求められよう。
図表 日銀の新たなETF買い入れ方針、金額以外はこれまでと同じに見えるが・・・
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