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朝鮮半島リポート (第17回)

開城「爆破」で流動化する朝鮮半島シナリオ

高まる緊張、カギとなる南北経済協力の扱い

朝鮮半島経済研究会
   

2020/06/19

 北朝鮮が16日、開城に設置した韓国との共同連絡事務所を爆破した。金正恩政権が南北協力の象徴である事務所の破壊という強硬策に打って出た背景には、韓国の文在寅大統領との首脳会談で合意しながら南北経済協力が一向に進まないことへの不満や苦境に陥っている国内の経済問題がある。事務所爆破は韓国から譲歩を引き出すための瀬戸際戦術との見方もあるが、北朝鮮が要求してきた経済制裁の緩和は米韓同盟や国連決議との絡みで容易ではなく、朝鮮半島情勢はにわかに流動化。南北間の緊張が一段と高まり、対立が長期化する可能性もある。

【第17回のポイント】

① 北朝鮮が、この時期に過激な行動に出た背景としては、対外関係の打開や、制裁と新型コロナウイルスの影響で経済の停滞が深まる中で国内の不満をそらす狙いがある。

② 金正恩委員長の健康不安説の打ち消しや、妹の金与正氏の権威付けなどの思惑もうかがえ、正恩氏と与正氏が対韓国工作で役割分担しているとの見方もある。

③ 北朝鮮が次の段階の行動計画を実行に移せば、局地的な衝突や小競り合いなどで軍事的な緊張が高まる可能性も否定できない。

④ 経済協力などの経済問題が南北関係のカギである構図に変化はなく、米国の動向が大きな影響を与える。11月の米大統領選を控え、南北朝鮮と米国、中国などの駆け引きに注目する必要がある。

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