北朝鮮が16日、開城に設置した韓国との共同連絡事務所を爆破した。金正恩政権が南北協力の象徴である事務所の破壊という強硬策に打って出た背景には、韓国の文在寅大統領との首脳会談で合意しながら南北経済協力が一向に進まないことへの不満や苦境に陥っている国内の経済問題がある。事務所爆破は韓国から譲歩を引き出すための瀬戸際戦術との見方もあるが、北朝鮮が要求してきた経済制裁の緩和は米韓同盟や国連決議との絡みで容易ではなく、朝鮮半島情勢はにわかに流動化。南北間の緊張が一段と高まり、対立が長期化する可能性もある。
【第17回のポイント】
① 北朝鮮が、この時期に過激な行動に出た背景としては、対外関係の打開や、制裁と新型コロナウイルスの影響で経済の停滞が深まる中で国内の不満をそらす狙いがある。
② 金正恩委員長の健康不安説の打ち消しや、妹の金与正氏の権威付けなどの思惑もうかがえ、正恩氏と与正氏が対韓国工作で役割分担しているとの見方もある。
③ 北朝鮮が次の段階の行動計画を実行に移せば、局地的な衝突や小競り合いなどで軍事的な緊張が高まる可能性も否定できない。
④ 経済協力などの経済問題が南北関係のカギである構図に変化はなく、米国の動向が大きな影響を与える。11月の米大統領選を控え、南北朝鮮と米国、中国などの駆け引きに注目する必要がある。
① 北朝鮮が、この時期に過激な行動に出た背景としては、対外関係の打開や、制裁と新型コロナウイルスの影響で経済の停滞が深まる中で国内の不満をそらす狙いがある。
② 金正恩委員長の健康不安説の打ち消しや、妹の金与正氏の権威付けなどの思惑もうかがえ、正恩氏と与正氏が対韓国工作で役割分担しているとの見方もある。
③ 北朝鮮が次の段階の行動計画を実行に移せば、局地的な衝突や小競り合いなどで軍事的な緊張が高まる可能性も否定できない。
④ 経済協力などの経済問題が南北関係のカギである構図に変化はなく、米国の動向が大きな影響を与える。11月の米大統領選を控え、南北朝鮮と米国、中国などの駆け引きに注目する必要がある。
◆関連レポート◆
朝鮮半島経済研究会・朝鮮半島リポート
シリーズ企画「転機の朝鮮半島」
・【第1回】南北首脳会談で見せた北朝鮮の対話戦略――経済建設に軸足シフト、制裁緩和狙う
・【第2回】文在寅政権が描く「朝鮮半島の新経済地図」――南北経済共同体、北東アジア協力も視野
・【第3回】詰めを残した米朝首脳会談の政治的ディール――後続の対話プロセス、経済問題も焦点に
・【第4回】国連制裁の影響が表れ始めた北朝鮮経済――17年の貿易が大幅減、中国依存度さらに上昇
・【第5回】経済制裁が北朝鮮の生産活動にも打撃――マイナス成長、5ヵ年戦略達成に暗雲
・【第6回】インフラ連結、経済協力の推進で合意――韓国大統領訪朝、実現性は非核化次第
◆書籍・報告書のご案内◆
2019年度アジア研究報告書「制裁下の北朝鮮経済」(20年3月)
『朝鮮半島 地政学クライシス ―激動を読み解く政治経済シナリオ』(17年6月)
※旧サイト(~2018.8月)の中国・アジア研究、アジア予測、コラムなどの一覧はこちらから
朝鮮半島経済研究会・朝鮮半島リポート
シリーズ企画「転機の朝鮮半島」
・【第1回】南北首脳会談で見せた北朝鮮の対話戦略――経済建設に軸足シフト、制裁緩和狙う
・【第2回】文在寅政権が描く「朝鮮半島の新経済地図」――南北経済共同体、北東アジア協力も視野
・【第3回】詰めを残した米朝首脳会談の政治的ディール――後続の対話プロセス、経済問題も焦点に
・【第4回】国連制裁の影響が表れ始めた北朝鮮経済――17年の貿易が大幅減、中国依存度さらに上昇
・【第5回】経済制裁が北朝鮮の生産活動にも打撃――マイナス成長、5ヵ年戦略達成に暗雲
・【第6回】インフラ連結、経済協力の推進で合意――韓国大統領訪朝、実現性は非核化次第
◆書籍・報告書のご案内◆
2019年度アジア研究報告書「制裁下の北朝鮮経済」(20年3月)
『朝鮮半島 地政学クライシス ―激動を読み解く政治経済シナリオ』(17年6月)
※旧サイト(~2018.8月)の中国・アジア研究、アジア予測、コラムなどの一覧はこちらから
バックナンバー
- 2023/09/28
-
ロ朝首脳会談と北朝鮮の経済(下)
- 2023/09/20
-
ロ朝首脳会談と北朝鮮の経済(上)
- 2023/08/24
-
日米韓と日中韓、2つの3カ国協力の新展開
- 2023/05/23
-
ポスト「冷戦後」の韓国・北朝鮮経済
- 2022/10/13
-
北朝鮮経済、建設事業頼みの「自力更生」