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中国・アジアウォッチ シリーズ企画「コロナ後のイノベーション動向」 (1)

スタートアップの選別淘汰加速へ

―中国のVC投資失速、世界で解雇急増
―ヘルス、ソフト系に資金シフト

上原 正詩
  主任研究員

2020/06/03

 新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)でスタートアップの世界が激変しつつある。ベンチャーキャピタル(VC)投資も減少傾向に拍車がかかっている。都市封鎖の影響で消費活動が停滞し、影響を受けた企業の多くが一時解雇(レイオフ)に走っている。一方でコロナ禍の影響が小さい優良企業の中には、VCからの新規資金調達に成功した事例も出てきている。スタートアップ間の優勝劣敗が明確になり、今後、体力のあるビッグテックによる買収も活発になる可能性がある。
 コロナ後のスタートアップの世界はどうなるのか。世界のスタートアップ1200社強のVC投資などの分析を通じて、今後のイノベーションの方向性を考察する。米国と中国で2分されつつあるテック業界の勢力図の現状と変化、VCやビッグテックの投資が活発になりそうな産業などを俯瞰する。日本はテック分野で米中の狭間に埋没しつつあるが、世界のスタートアップに起きていることは今後の日本の未来を占う上でも参考になろう。

【ポイント】

  1. 新型コロナウイルスの影響はスタートアップの世界にも及んでいる。20年1~3月の世界のVC投資は投資件数、投資総額ともに前年同期比でマイナスとなった。特に中国は件数、投資額とも大幅に減少した。
  2. 資金調達が難しくなっている現状を受けて、人員削減に乗り出すスタートアップも世界で相次いでいる。旅行やモビリティ(移動)系にレイオフが多く見られる。
  3. 一方、3月以降、資金調達に成功した企業も出ており、スタートアップ間で明暗が分かれつつある。特にヘルス、ソフトウエア系は全体と比較しても、資金流入の割合が大きくなっている。