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中国・アジアウォッチ シリーズ企画「コロナ後のイノベーション・ハブ」 (1)

東南アジアに資金流入、中印はシェア低下

―ボストン、深圳などもバイオ関連で浮上  

上原 正詩
  アジア予測室長兼主任研究員

2020/08/18

 新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック(世界的流行)が続く中、コロナ禍はイノベーションの源泉であるベンチャーキャピタル(VC)の投資行動にも変化をもたらしている。世界の主要な国・地域、都市への投資動向を分析し、投資呼び込みに成功したイノベーション・ハブの生態系(エコシステム)について考察する。シリーズ企画「コロナ後のイノベーション・ハブ」では国・地域、都市ごとにVCの投資動向を見る。日本でも都市ごとにスタートアップ生態系を整備しようという気運が高まっている 。世界のイノベーション・ハブへの投資動向を把握し、日本の相対的な位置付けを理解することは、国内の生態系整備へのヒントになろう。前回の企画「コロナ後のイノベーション動向」 では主に産業分類別にVCの投資動向を分析した。ヘルスケア、ソフトウエア系のスタートアップが相対的にポジションを高めていることが分かった。国・地域、都市別の動向はこうした産業の集積の状況が反映されていると思われる。

【ポイント】

  1. コロナ禍下(20年3~7月)の世界のベンチャーキャピタル(VC)投資額は前年同期比でマイナスとなった。投資を受けた企業数は投資額以上に落ち込み、VCが投資先を絞るとともに、投資した企業にはより手厚く資金を投じている模様だ。
  2. 国・地域別では、米国、インドネシア、英国、スイスが前年同期比で大幅に伸び、世界全体のVC投資に占めるシェアを高めている。中国、インドは激減しており、代わってインドネシア、シンガポールを中心に東南アジアに資金が流入している。
  3. 主要な都市ではプラス成長の米国でも濃淡があり、シリコンバレー、ボストン、ワシントンDC、シアトルなどが前年同期比で大きく伸びた。中国では深圳が前年同期比ほぼ2倍にシェアを拡大。ボストン、深圳ではバイオ関連企業が大型調達に成功しており、コロナ禍でバイオ、ヘルスケア関連が注目されている模様だ。