インドネシアは20年3~7月のVC投資額が前年同期比6倍の36.9億ドルとなり、コロナ禍でVC投資が跳ね上がった(シリーズ企画【1】「東南アジアに資金流入、中印はシェア低下」参照)。米中英に次ぐ第4位のVC投資先国となり、アジアでは19年3~7月に4位だったインドを大きく上回った。これはひとえにライドシェア大手のゴジェックに因る。同社が3月に調達した30億ドルはインドネシアの全調達額の8割を占めた。配車サービスだけでなく宅配や決済サービスも提供する「スーパーアプリ」としての性格を強めている同社は、周辺諸国への事業拡大にも乗り出している。アジアのテック企業を代表するスタートアップの一つになりつつある。ゴジェックへの投資を足がかりに、インドネシア、シンガポールを中心に東南アジアのスタートアップ生態系のキープレーヤーを探る。
【ポイント】
- 東南アジアのスタートアップ生態系はインドネシアとシンガポールが中心となっており、ライドシェア、電子商取引に産業分野が偏っている。
- インドネシアはゴジェック、シンガポールはグラブという巨大ユニコーンがあり、両社が投資家を2分している。両社は調達資金の一部をスタートアップに回し、それぞれの生態系を形成しつつある。
- 投資家の中では米セコイア・キャピタルとシンガポール政府系ファンド(SWF)の存在感が大きい。有力スタートアップに軒並み出資し、コロナ禍下で投資を加速している。
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