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中国・アジアウォッチ シリーズ企画「コロナ後のイノベーション・ハブ」 (3)

シンガポール、大学・政府が起業家「内製」へ

―東南アジア起業家、主流は留学経験者 

上原 正詩
  主任研究員

2020/09/03

 東南アジアのシード、初期段階のスタートアップはどこから来るのか。米国などでは大学、アクセラレーターがスタートアップを生み出すエンジンとなっているが、東南アジアでは系統的に起業家を生み出す仕組みが形成される以前の段階にあると思われる。 同地域のスタートアップ生態系は、比較的評価額が大きいスタートアップ群で見ると、インドネシアのゴジェック、シンガポールのグラブ、VC大手の米セコイア・キャピタル、シンガポール政府系ファンドなどがキープレーヤーとなっていた(シリーズ企画【2】「東南アジア生態系、ゴジェックとグラブが2分」参照)。スタートアップはシード、初期、後期などいくつかの段階を踏んで成長するが、シリーズ企画【2】で見たのは、後期段階に近い生態系のキープレーヤーだ。
 シリーズ企画【2】では、東南アジアのスタートアップのうち、評価額3億ドル以上の有力スタートアップ15社 を選び、それらとVCなど投資家との関係を調べた。今回はこの15社の創業者がどのようなバックグラウンドをもっているかをまず見る。大きく4つ――①海外留学経験を経て自国に戻り起業した「留学組」、②国内の大学を卒業し自国で起業した「国内派」、③東南アジアに来て起業した「外国人」、④国内の大学の起業教育を経験して起業した「学生起業家」――に分類すると、留学組が多数を占め、外国人が続いた。

【ポイント】

  1. 東南アジアの有力スタートアップ15社の創業者を「留学組」「国内派」「外国人」「学生起業家」の4つに分類すると、「留学組」が多数を占めた。
  2. 一方、シンガポールは「外国人」が多い。政府も起業家向けの就労許可証を用意するなど、外国人起業家の誘致に積極的な政策を採用している。
  3. シンガポールの課題は起業家の「内製化」である。シンガポール国立大学(NUS)をはじめ、各大学が起業家教育に力を入れ、政府も資金面での支援を拡充している。
  4. 500スタートアップスなど海外の有力アクセラレーターも東南アジアに進出している。Yコンビネーターの育成プログラムにも東南アジアからの参加が増加傾向にある。