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朝鮮半島リポート 【朝鮮半島リポート】 (第21回)

コロナ禍で北朝鮮が異例の動員型経済建設

防疫対策に腐心、問われる新経済計画の質

朝鮮半島経済研究会
   

2020/10/21

 北朝鮮が朝鮮労働党創建75周年の祝賀行事を終え、来年1月の党大会に向け、住民を総動員して災害復旧や経済建設に当たる「80日戦闘」に突入した。北朝鮮では党大会などの重要行事の成果を出すため、行事の前後に生産や建設などの労働力を集中的に高める総動員令をかけることが多いが、コロナ禍にある今回はいつもとやや様相が異なる。防疫による人民の生命・安全を優先せざるを得ず、国際社会の制裁によって対外経済活動も制限されることから、従来にも増して「自力更生」が強調されている。来年1月の党大会で打ち出す新たな経済計画との関係も注目される。

【第21回のポイント】

① 10月10日の朝鮮労働党創建75周年の祝賀行事は未明に軍事パレードを行うなど異例づくしの内容だった。新型ミサイルなどで軍事力の向上を誇示する一方、金正恩委員長は住民への感謝のことばを繰り返し、住民に寄り添う姿勢を示して国内の結束を促した。

② 北朝鮮は祝賀行事後に住民総動員の「80日戦闘」に本格的に突入したが、新型コロナの防疫最優先で災害復旧、農業に力を入れるなど従来の動員令とは異なる点もうかがえる。対外経済活動の拡大が困難となる中、自力更生と科学技術を重視しているのも特徴だ。

③ 来年1月の党大会では、新たな経済計画が焦点となる。北朝鮮経済が国連制裁、新型コロナ、水害の「三重苦」に直面している現状では、高い数値目標は公表しにくい環境にあり、量と質の両面でどんな計画を打ち出すか注目される。

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