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金融研究

全国銀行の粗利益は29年ぶり低水準
―コロナが追い打ち、銀行に最大40兆円の損失リスクも―

2020年度金融研究班報告①:銀行決算分析(20年3月期)

研究生:飯田航平、竹内直也、田中哲矢
   
総括:宮﨑 孝史
  副主任研究員
<監修>主査:左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員

2020/10/07

2020年3月期の全国銀行決算は、全業態で最終減益となり、最終損益は2兆円の大台を割り込んだ。粗利益が90年度以来29年ぶりに10兆円を下回るなど減少に歯止めがかからないほか、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な株安も重しとなった。経費率の低下により業態間にみられた預貸利ざやの差が逆転し、都市銀行の預貸利ざやが地方銀行および第二地方銀行を上回った。地方銀行の中小企業向け融資を中心に貸出金が増加し、全国銀行の総資産は拡大傾向が続いている。厳しい収益環境のもと、都市銀行や地方銀行は外債や投資信託、超長期国債の保有を増やしており、リスクテイク姿勢を強めている。この間、大手銀行を中心に与信先の業況悪化を見込んで貸倒引当金を積み増している。自己資本比率は規制比率を上回る水準を維持しているが、緩やかな低下傾向が継続している。今般のコロナ危機によって国内の銀行が被る潜在的な信用損失額は、21年度末までに最大で40兆円程度に上る可能性があり、将来的に銀行が多額の信用損失を被るリスクは増大している。