中国政府は9月下旬、燃料電池車(FCV)を対象とした新たな産業育成策を発表した。電気自動車(EV)など他の新エネルギー車と同様の既存の補助金制度を撤廃。代わりにモデル都市を指定し、そこでの中核技術の産業化などに奨励金を出すという内容だ。政府は新エネ車を次世代の成長分野と期待するが、中国企業が主導して普及させるという目論見は外れ、EVでは外国勢の先行を許す形となっている。今回の育成策には、まだ多くの外資が本格化させていないFCVに関する技術を独自に確立させ、中国が開発の主導権を握るという、強い意志がにじんでいる。
【ポイント】
- 中国政府は9月下旬、燃料電池車(FCV)を対象とした新たな産業育成策を打ち出した。モデル地域を定め、部品などの技術開発などに奨励金を支給する。
- 政府はEVなど新エネルギー車において、中国企業が市場の主導権を握ることを目指してきたが、実際は米テスラなど外資にシェアを奪われてしまった。今回の産業育成策はFCVでの中国企業の巻き返しを図る狙いがある。
- 上海汽車が独自開発のFCVを発売するなど、企業も動き始めている。中国企業が主導する形で、中国にFCV市場が根付くのか、今後の動向が注目される。
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