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データサイエンス研究 リサーチペーパー

人口減が誘う「縮小型インフレ」

ー大規模データ分析で探る食品消費の先行きー

北爪 匡 日本経済新聞社編集局記者
   
田原 健吾
  データサイエンス研究室長兼主任研究員
監修(データサイエンスコース主査):渡辺 安虎
  特任研究員/東京大学教授

2020/11/15

 スーパーなど小売店の販売履歴を収集する日経POS情報から、2002〜19年における酒類を除いた食品、延べ約9000万件の販売データ等を用いて、食品の小容量化・実質値上げのトレンドを分析した。

<要旨>
 少子高齢化と人口減少で国内消費に下押し圧力がかかるなか、日常生活に最も密接に関係する食品市場で静かなインフレが進行している。
 2000年代に下落基調にあった食品の表面価格は10年代に緩やかに上昇に転じた。一方で食品の平均内容量は02年から19年の間に12%減少し、内容量あたり単価は直近7年間で年率1.3%と表面上の価格を大きく上回るペースで伸びた。食品メーカーによる高付加価値戦略なども背景として考えられるが、人口動態の影響が見逃せない。平均世帯規模の小さい地域の店舗で、より小容量の商品の方が売れる傾向がみられる。
 1世帯あたり人数の縮小は、メーカー側の「価格据え置き・小容量化」を受け入れる土壌となった。総人口が減っても細分化で世帯数は増え続けてきたため、実質的な値上げがこれまで市場規模の維持に寄与してきた側面がある。ただし世帯数も早晩に減少に転じることから、「縮小型インフレ」で消費を下支えするモデルが維持できなくなる可能性もある。

店舗ごとに見た世帯規模と容量単価の関係

※2020年11月15日付の日本経済新聞朝刊で本レポートの内容が紹介されました。
※2020年11月16日放送の「ワールドビジネスサテライト(WBS)」(テレビ東京)で紹介されました。
※ 2020年11月30日付の日経MJ(流通新聞) 1面の記事「食品価格 コロナで変調」で紹介されました。

<ご案内>
 日本経済研究センターは2020年度、ミクロのビッグデータから経営戦略に役立つ知見を引き出す人材を育成する「データサイエンスコース」を新たに開設しました。元アマゾンジャパン・経済学部門長の渡辺安虎・東京大学教授がコースの指導にあたります。ビジネスの文脈上で実践的なデータを活用し、デジタルトランスフォーメーション(DX)経営を担える科学的な分析能力を養います。
 9月からの演習スタートを機に当サイトにデータサイエンス研究のページを設け、その分析成果の一部をこちらで発信していきます。

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