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金融研究

日経平均が2万600円を下回ると日銀のETFに含み損

―通貨発行益の源泉は国債利息から分配金収入にシフト

左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員
中野雅貴:2019年度委託研究生(日本政策金融公庫中小企業事業本部から派遣)
   

2020/12/13

<ポイント>

(1)日銀が上場投資信託(ETF)の購入を始めてちょうど10年になる。この間、日銀は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を抜いて国内最大の株主となった。

(2)市中流通残高ベースの新たな買い入れ方針も加味して日銀のETF保有額を求めたところ、11月末で時価45兆円、含み益は10兆円に膨らんだ。3月半ばに一時含み損が発生していたが、その後の株価高騰を受けて回復した。他方で、ETFの簿価が急速に切り上がっており、含み益がなくなる株価を意味する損益分岐点は3月末からの8カ月で1,900円上昇した。日経平均株価が2万600円を下回ると、日銀のETFには含み損が生じる。

(3)日銀の財務リスクの増大はストック(ETFの保有額)だけでなく、フロー(分配金収入)の面でも見られる。通貨発行益(シニョレッジ)の源泉が、国債利息から分配金収入にシフトしているからだ。将来の株価変動に伴う財務リスクに備えて、分配金収入を内部に貯めておけるような仕組みが必要である。

 

3月半ばにETFには一時含み損が発生、その後の株高で損益分岐点は3月末から1,900円上昇

(注)損益分岐点は筆者試算値
(資料)日本銀行の買い入れ実績「指数連動型上場投資信託受益権(ETF)および不動産投資法人投資口(J-REIT)の買入結果ならびにETFの貸付結果」、Bloomberg