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金融研究

日銀、TOPIX連動のETF買い入れに一本化

―特定銘柄の保有比率上昇が累積的な副作用

左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員
中野雅貴:2019年度委託研究生(日本政策金融公庫中小企業事業本部から派遣)
   

2021/03/19

<ポイント>

(1)日銀は19日に公表した「より効果的で持続的な金融緩和」で、現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和(YCC、通称イールドカーブ・コントロール)を継続するために、長期金利の変動幅をそれまでのプラスマイナス0.2%から0.25%に拡大するとともに、新たに①貸出促進付利制度と②連続指し値オペ制度を導入した。前者は金利引き下げが金融機関収益に及ぼす影響に配慮したプルーデンスの視点からの措置、後者は今後の長期金利上昇を想定し、特定年限の国債を連続して無制限に買い入れることで長期金利を0.25%以下に抑えるという強いコミットメントである。

(2)リスク性資産の買い入れについては、年間購入額の原則(ETFは6兆円、J-REITは900億円)を撤廃し、上限(同12兆円、1,800億円)のみ残した。市場の混乱時に大規模な買い入れができるよう、より柔軟な買い入れ方針に変更した。ETFのリスクプレミアムが足元で縮小していた点から考えても、日銀は「リスクプレミアムに働きかける」という所期の目的を果たしていた。今後は危機時での買い入れにシフトしていくことになり、出口に向けた第一歩と考えることができる。2016年9月の総括検証後には、YCCの導入を機に国債買い入れの減速が始まった。今回の点検後はETFとJ-REIT買い入れの減速が始まるとみられる。

(3)日銀はさらに、これまで東証株価指数(TOPIX)、日経平均株価、JPX400の3指数に連動するETFに分散していたETFの買い入れを、今後はTOPIX連動型に一本化する。特定の銘柄で日銀の間接的な保有比率が上昇している点が懸念されていた。国内最大の株主がETFの買い入れ方針を大きく見直したことで、今後は日経平均とTOPIXの比(NT倍率)は大幅に修正されるなど、個別株価のみならず、株価指数の価格形成にも影響を及ぼす可能性がある。

 

日銀による株式間接保有比率—―ファストリ株における浮動株の4割を保有

(注1)間接保有比率を計算する上で用いる浮動株比率はBloombergベース。同社の浮動株比率基準では、インサイダーおよび安定株主の保有株を固定株とみなしている。なお、日銀の保有分は浮動株とみなされている。
(注2)アドバンテスト株は大株主の富士通が17年11月6日に全株の売却を完了した。このことで、浮動株比率が高まった。結果、ファストリ株と異なり間接保有割合の増加は緩やかになっている。
(資料)日本銀行の買い入れ実績「指数連動型上場投資信託受益権(ETF)および不動産投資法人投資口(J-REIT)の買入結果ならびにETFの貸付結果」、Bloomberg

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