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金融研究

ポスト・コロナの新たな脅威
―業務多様化で収益力強化、グリーン化による座礁資産化の抑止を―

2020年度金融研究班報告③:変革が求められる地域金融

主査:左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員
総括:宮﨑 孝史
  副主任研究員
委託研究生:飯田航平、竹内直也、田中哲矢
   

2021/03/22

  主要中央銀行の大規模な資金供給を受けて、緩和マネーがリスク資産に流入している。巨額の経済対策が成立した米国では長期金利の上昇ペースが加速しており、米連邦準備理事会(FRB)は金融政策の正常化と緩和の間でジレンマを抱える。流動性からソルベンシーへとリスクの性質が変わる中、金融当局も金融機関もリスク管理体制を強化する必要がある。異次元緩和からの出口の議論は結局、損失の配分問題に帰着する。伝統的な銀行は、ネット専業銀行など新形態銀行の躍進で、厳しい経営環境が続く。なかでも地域金融機関は手数料収益の拡大など業務の多様化による競争力や経営基盤の強化が求められる。ポスト・コロナの新たな脅威として、国内外で気候変動リスクが注目されている。ESG分野への投資拡大という新潮流と、低炭素社会への移行に伴い発生する座礁資産という新たな「不良債権」の発生に、早急に備えることが求められている。

図表 TOPIXのリスクプレミアムはコロナ以前より縮小

(資料)直近は21年3月18日。TOPIXのリスクプレミアムはTOPIX益回り-10年物国債利回り。
(資料)Bloomberg