コロナ禍が世界のキャッシュレス化を後押ししている。アジアは比較的コロナ禍の被害が小さいが、中央銀行主導で小口デジタル決済インフラを整備する動きが活発化している。中国のように中銀デジタル通貨(Central Bank Digital Currency=CBDC)発行に向けて本格始動した国もある。シリーズ企画「デジタル通貨と競争政策」では中国、インド、そしてカンボジアの事情を探り、決済イノベーションを促す競争政策の視点からこうした動きを分析する。
【ポイント】
- コロナ禍を受けてキャッシュレス化推進の機運が世界的に高まっている。中央銀行がキャッシュレス決済を可能にする小口デジタル決済インフラを構築する動きが活発化し、一部の国では中銀によるデジタル通貨(CBDC)発行の動きが具体化してきた。特に中国は「デジタル人民元」導入に向けて実証実験を本格化している。
- 中国ではすでに「民間デジタル通貨」ともいうべきスマホ決済サービスが普及している。螞蟻集団(アント・グループ)と騰訊控股(テンセント)がスマホ決済インフラをそれぞれ独自に構築し、2社による市場寡占状態が続いている。中国人民銀行はデジタル人民元の導入で、決済サービス間の相互乗り入れを可能にし、ゲームチェンジを図る考えだ。
- 中国のIT分野では事後規制の原則のもと、技術革新と監督のバランスが探られてきた。スマホ決済という技術革新への規制も順次強化されている。最近では独占禁止法を盾にしたテック企業の締め付けも強くなっている。デジタル人民元では政府・中銀自らがインフラの運用を手掛け、決済サービス間の相互運用を可能して競争を促進し、寡占の弊害を解消する狙いと捉えることもできる。
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