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中国・アジアウォッチ シリーズ企画「デジタル通貨と競争政策」 (中)

インド、預金通貨の決済インフラ「UPI」整備

―電子マネー圧倒も、グーグルなど米系寡占招く

宗像 藍子 (20年度研究生)
   
上原 正詩
  主任研究員

2021/04/26

 インドではスマートフォンから支払い・送金が簡単にできる小口決済インフラ「統合決済インターフェース(UPI=United Payments Interface)」が2016年4月に導入され、急速にキャッシュレス化が進んでいる。UPIはスマホを通じて365日24時間、リアルタイムの銀行口座間送金を可能にする決済システムだ 。200以上の銀行やノンバンクが参加しており、異なる金融機関間の送金ができる。

【ポイント】

  1. インドではスマホや携帯電話から支払いや送金が簡単にできる小口決済インフラ「統合決済インターフェース(UPI)」が2016年に導入され、キャッシュレス化が急速に進んでいる。UPIは銀行口座(預金通貨)を基盤とした決済システムで、預金通貨をデジタル通貨のように使う仕組みだ。
  2. UPIは政府・中銀が主導し、主要銀行が出資するインド国立決済公社(NPCI)が運用する。導入の結果、プリペイド方式の電子マネーは伸び悩み、UPIを利用した決済サービスが主流になるなど、民間デジタル通貨の市場環境は劇的に変化した。政府主導のインフラ整備が民間の競争を活発にした。
  3. UPIの導入で結果的にスマホ決済サービス市場におけるグーグルやウォルマート系など米系大手による寡占が進んでいる。NPCIは特定企業の寡占的なUPI利用を防ぐため利用上限を設けるなど運用ルールを随時変え、競争的な環境を維持する考えだ。