カンボジアは20年10月28日、スマホを使った小口決済システム「バコン」の運用を正式に開始した 。バコンはプロジェクト及びシステムの名称で、アンコールワット遺跡群にある9世紀に建造された寺院の名前に由来する。カンボジアの現地通貨リエルだけでなく、国内で広く流通する米ドルも取り扱っている。人口1600万人規模のカンボジアで、20年12月末までの約2カ月間で5万人ほどが利用したという。
【ポイント】
- カンボジア国立銀行(中央銀行)は20年10月にスマホを使った小口決済システム「バコン」を導入した。ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用したシステムで、中銀デジタル通貨(CBDC)に類似した仕組みだ。リエル及びドルに対応した小口スマホ決済に必要なインフラを、末端のウォレット(財布)まで国・中銀が提供する。
- カンボジア中銀がバコン導入を急いだ背景には、金融システムが未熟なまま携帯電話が普及したことにより、民間企業が手掛ける送金・決済サービスが台頭したことがある。さらに自国通貨以上に米ドルが使われる「ドル化」の現状を変え、通貨主権を取り戻す狙いもある。
- バコンのシステム開発を担当したのは日本のスタートアップ、ソラミツ(東京・渋谷)である。日本ではキャッシュレス化に向けて、手数料などのコストや相互接続性といった利便性が課題になっている。ソラミツは地域単位でブロックチェーンを使ったデジタル通貨を普及させ、それらを相互接続することで全国規模にすることを提案している。
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