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中国・アジアウォッチ シリーズ企画「SPACが変えるイノベーション」 (1)

コロナ禍、スタートアップ上場急増のなぜ

―米国でブーム「SPAC」のカラクリ、警戒する声も

上原 正詩
  主任研究員

2021/07/13

 コロナ禍下の好調な株式市況を受けて、テック系スタートアップなど企業の新規株式公開(IPO)が急増している。特に米国の2021年のIPO数は半年足らずで20年通年とほぼ並び、通年でもITバブル(ネットバブル)崩壊以降で過去最高を記録しそうな勢いだ。SPAC(特別買収目的会社)と呼ばれる空箱企業の上場が先導しており、結果的にSPACとの合併を通じたスタートアップの上場も急増している。21年4-6月に入り米国ではやや陰りが見えるものの、SPACの波はアジアなど世界各地に広がろうとしている。シリーズ企画「SPACが変えるイノベーション」では、コロナ禍でSPACが急増した理由やSPACが買収対象としている技術テーマの動向を分析することで、スタートアップを中心とするイノベーションの世界がどう変化しているかを見る。

【ポイント】

  1. スタートアップなど企業の新規株式公開(IPO)がITバブル(ネットバブル)崩壊以降最多に迫る勢いで増加している。牽引しているのは米国で、特にSPAC(特別買収目的会社)と呼ばれる事業実態のない企業の上場がブームとなっている。結果的にSPACとの合併を通じて、テック系スタートアップの上場が増加している形だ。
  2. SPACとの合併はスタートアップにとって株式公開への近道である。合併交渉を通じて半年程度の短期間で上場ができる。投資家への説明会などを開催する必要がある伝統的なIPOの半分以下だ。「IPO2.0」を提唱する投資家もいる。
  3. SPACはナスダックなど証券取引所にとっても上場企業数の増加というメリットがあり、コロナ禍のカネ余りの環境の中、機関投資家や一般投資家にも投資機会をもたらた。しかし個人投資家にとってはリスクも高く、米証券取引委員会(SEC)もその過熱ぶりに警戒感を高めている。